文/石川真禧照(自動車生活探険家)
旗艦車種A8に次ぐ上級車のA7。その流れるような車体造型は、昨今のクーペの中でも群を抜く美しさを誇る。機能面でも随所に革新的な技術を採用し、近未来の車をイメージさせる仕上がりである。
アウディは歴史の長い自動車メーカーのひとつである。メルセデス・ベンツ、BMWとともに「ドイツ高級車御三家」と称されるが、アウディのブランドを冠した初代は1910年に登場しており、御三家の中では最も古くから車づくりを手がけてきた。
同社は革新的な技術の実用化にたけた自動車メーカーとしても、よく知られている。乗用車に4輪駆動の技術を採用する、アルミニウムを使用した車体づくりを実用化するなど、技術面で常に世界の自動車製造を牽引してきた。
さらに、車体づくりにおいては技術的な部分だけでなく、デザインに関しても他の高級志向の車には見られない斬新な意匠を採用することが多い。
とりわけ室内のきめ細やかなつくりは、他社の追従を許さない。前席の内装や、使い勝手を考慮したセレクターレバー、小物入れなどの品質の高さに関しては、日本の自動車メーカーがお手本にしているほどの完成度を誇る。
同社が生産する車種はじつに豊富だ。小型車から大排気量の大型乗用車、SUV、スポーツカーまで揃えており、いずれも品質の高さと走行性能の優秀さを楽しめる。
今回紹介するA7は2011年に初代が登場し、約7年ぶりに新型になった4ドアクーペの上級車。初代から踏襲されているのが、屋根から後部バンパーまで大きく開口する荷室の扉だ。A7は全長約5mと大型である。他の自動車メーカーなら独立した荷室を持つ4ドアセダンにするだろう。アウディは、この大きな車体にステーションワゴンのような荷室扉を採用。それが同車のデザイン上の大きな特徴となっている。
計器盤全体がナビ画面になる。
最高水準の安全装備も搭載
流麗な造型を纏った新型A7は、とりわけ斜め後方からの姿が美しい。屋根から尾灯にかけて描く曲線は色気さえ感じる。大型セダンであっても造型の美しい車をつくりたい、そんなデザイナーの意志がひしひしと伝わってくる。
デザイン性を重視した室内の上質感も秀逸だ。運転席のドアを開けて、座席に座り計器盤を見ても真っ黒なパネルがあるだけでメーター類は一切見えない。エンジンを始動させると、計器盤にメーターが浮かび上がり、中央の液晶画面などに様々なタッチ操作式のスイッチ類が現れる仕掛けだ。
また、計器盤全体をナビゲーション画面に切り替えられる機能は、使い勝手がいい。運転中に視線を大きく動かさずとも、指示された方向に車を進められるので、安全面での効果も高い。
主となる動力源はV型3Lのガソリンエンジン。それに48ボルト電源による小型の回生モーターを組み合わせた「マイルドハイブリッドシステム」を採用し、燃費と環境性能の向上が図られている。
他社に水をあけられていた安全装備は新型になって完全に追いつき、A7には最高水準の安全技術が実用化されている。
【アウディ/A7 スポーツバック】
全長× 全幅× 全高:4975×1910×1405mm
ホイールベース:2925mm
車両重量:1900kg
エンジン:V型6気筒DOHCターボ/2994㏄/span>
最高出力:340PS/5200〜6400rpm
最大トルク:51.0㎏-m/1370〜4500rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:13.6㎞/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 73ℓ
ミッション:7段自動変速機
サスペンション:前・後:5リンクダブルウィッシュボーン
ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
乗車定員:5名
車両価格:1061万円(消費税込み)
問い合わせ:コミュニケーションセンター 0120・598・106
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年3月号より転載しました。