猫と暮らす人たちが自虐的によくいうのが「人間は猫の下僕」というフレーズ。そのココロは、猫の幸せを一番に考えているということ。つまり、「猫が幸せならばそれでいい」――。
2014年に設立された「ねこ医学会」で学術理事を務める入交眞巳先生は、アメリカで動物行動学の学位を取得した動物の行動診療科を専門とする猫好き獣医さん。猫の行動学や「猫の幸せ」に関する講演をして各地を飛び回っています。
3年前、猫と暮らすサライ編集者Iが入交先生に初めて相談したのは、愛猫の“粗相”についてでした。
今回は、以前『にゃんこサライ』でも取り上げた『ありがとう!わさびちゃん』などの書籍担当編集者である通称「おじさん編集者」の愛猫「かつもと」くんのトイレ問題のその後について、お話したいと思います。
入交先生に相談した当時、かつもとくんは9歳。当時は妹分のミミちゃんという猫さんと、人間家族4人と一緒に、戸建て住宅に暮らしていました。かつもとくんはトイレで用を足すこともありましたが、頻繁に布団の上にうんちをしてしまう悪癖がありました。それも、どういうわけかお父さん(おじさん編集者)の布団にばかり。
「嫌われているんでしょうか……。どうしたら改善できるのでしょうか」
困ったおじさん編集者は入交先生に相談。すると、個別の住環境などを徹底的に把握しなければ、これが原因だと即座に断定することは難しいとしたうえで、先生からいろいろな可能性を指摘されました。
「猫さんの粗相は、トイレが嫌い、マーキングやアピール目的、たまったストレスを解消するため、病気など、様々な要因が考えられます。他の猫との付き合い方がわからなくて粗相してしまう子もいるかもしれません」
おじさん編集者の話から、おしっこの量や仕方を見る限りマーキングの可能性はまず排除できそうでした。同居のミミちゃんとの相性も良く特に問題はなさそう。
では、トイレ環境を見直してみてはどうか、という先生のアドバイスに従って、おじさん編集者は自宅の猫用トイレについて改めて考えてみることにしました。
おじさん編集者宅の猫用トイレは、一抱え以上ある比較的大きなもの。先生によると、猫用トイレは猫の体の1.5倍の大きさが理想的とのことで、その面ではクリアできているようでした。トイレの置き場所も、特段騒がしい場所でも、不便な場所でもなさそうです。
「トイレにカバーはついていますか?」
入交先生の一言で、おじさん編集者ははっとしました。確かに、カバー付きのトイレだったのです。すぐさまカバーを外してみたところ、驚いたことに、かつもとくんの粗相は、ぴたっと止まったのです! ぴたっと!
どうも、カバー付きだと臭いが中で籠ってしまって、それがかつもとくんにはどうにも嫌だったようです。強面ながら、繊細な面があることがわかりました。
かつもとくんの場合はカバーを外すことで解決できたトイレ問題ですが、この他、砂の大きさや種類、トイレの形、大きさ、設置場所、同居猫との関係、病気など、粗相の原因は猫さんそれぞれによって異なります。
猫の行動に関するお悩み相談に真摯に応じてくれる入交先生。そんな入交先生が、愛猫家たちに送る書籍『猫が幸せならばそれでいい』を刊行することが決定! おじさん編集者が相談したようなトレイ問題をはじめ、猫あるある、飼い主困ったあるあるの原因と対策をじっくり説明してくれています。
『猫が幸せならばそれでいい』
猫好き獣医さんが猫目線で考えた「愛猫バイブル」
著/入交眞巳 著・絵/おぷうのきょうだい
定価本体1000円+税
発売日2019/2/8
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388666
入交眞巳先生
日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)卒業後、都内の動物病院にて勤務後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。北里大学獣医学部講師、日本獣医生命科学大学獣医学部講師を経て、どうぶつの総合病院・行動診療科主任、日本ヒルズ・コルゲート株式会社の学術アドバイザーを務める。現在も全国の獣医大学にて非常勤として教鞭をとっている。
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