文/鈴木拓也

温泉療法専門医が太鼓判|もっとも優れた健康法は「入浴」

世の中には健康法とされるものはゴマンとあるが、日本人がそうとは自覚せずに日々実践している健康法が1つある。
それは、「入浴」。

東京都市大学人間科学部で教鞭をとり、温泉療法専門医でもある早坂信哉教授によれば、「入浴こそ、一般の方が実践できる、もっとも優れた健康法」だという。

これは、早坂教授が過去20年にわたり、のべ4万人近くを調査し研究しての結論とのことで、その知見は昨年11月に刊行された『最高の入浴法』(大和書房)にまとめられている。

もともと温泉に入るのが健康に良いことは、奈良時代から経験的に知られていた。早坂教授によれば、温泉だけでなく(水道水を使った)家庭風呂でも、大きな健康効果が得られるという。もちろん、それはわれわれサライ世代にもしかり。具体的にどんな効果があるのか、本書からピックアップしてみよう。

■入浴は肩こりに効く

一説には、2人に1人が悩まされているという肩こり。そして、中年期以降に増加する四十肩や五十肩。国民病とも呼べる、こうした肩の不定愁訴に入浴は効くという。

肩こりは主に、僧帽筋を含む肩周辺の筋肉が緊張によって硬くなり、血流が悪くなって起こる。一方、四十肩や五十肩は、肩関節の周囲の靭帯がこわばって起こる。

どちらも入浴によって症状を緩和できると、早坂教授は述べる。

肩こりについては、「肩までお湯に浸かって温める」のが大原則で、その際には「肩や首をゆっくりと回して、筋肉をきちんとほぐす」ようにする。痛みが集中し硬くなっている「トリガーポイント」(ツボ)を、やさしく指で揉みほぐすのもよいという。

四十肩や五十肩も同様で、肩が温まってから、ゆっくりと肩を回すようにする。

いずれも、湯温は40℃、10分浸かるのがベストとのこと。

慢性的な腰痛にも効果はあるが、ぎっくり腰のような急性腰痛ではNG。そうした症状に見舞われたら、医師の診断を仰ぐのが先決だ。

■入浴は高血圧に効く

高血圧については、「ぬるめのお湯であれば、血圧を下げる効果」があると、早坂教授はアドバイスする。これは、入浴時に血管を拡げて血流が良くなるため。結果として、血圧が下がる。

この効果は、入浴を終えて約8時間持続するという。

ただ、入浴前に160/100を超えるほどの血圧は、「入浴に関連する事故のリスク」になるとのことで注意が必要だ。もっとも、これには個人差があり、入浴の可否判断は普段の体調を踏まえてすべきと、早坂教授は述べている。

他方、低血圧については、「40℃程度のお風呂に3分ほど入り、その後、25℃前後の水を手足に10秒ほどかける」というサイクルを5~6回ほど繰り返す、一種の温冷交代浴を勧めている。

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