和歌山県田辺市本宮町、熊野本宮大社のほど近くに湧くのが川湯温泉です。「川湯」という名前そのままに、熊野川の支流・大塔川の川底から70℃以上の温泉が湧き出ています。
川の流量が少なくなる12月~翌年2月にかけて、川の一部をせき止めてオープンするのが大露天風呂・仙人風呂です。幅約40m、奥行き約15m、深さ約60㎝という、まさに千人が入浴できる巨大温泉です。仙人風呂は江戸時代初期から始まったとされ、河原を掘り、温泉と川の水でちょうど良い温度になるように調整して入ったのでしょう。
天然の露天風呂は野趣溢れ、水着や湯浴み着などを着て老若男女が集います。昼間はもちろんですが、満天の星空を眺めながら入浴する夜もお薦めです。毎週土曜日の夜8時~10時には、湯船のまわりに竹筒の灯篭が並べられ、「湯けむり灯篭」が行なわれます。星々の瞬きと湯に映り込む灯篭の明かりが、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出します。
温泉の泉質はアルカリ性単純温泉。体に優しい温泉で、おしゃべりしながらの長湯も安心です。仙人風呂は川の状態により、開設期間・時間などが変更になりますので、事前にご確認することをお忘れなく。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。