石川県にある山代温泉は開湯1300年という歴史を持ついで湯の街です。文人墨客に愛された温泉地として知られ、なかでも食と陶芸の世界でその名が知られる北大路魯山人が足しげく通いました。
魯山人は山代温泉の旦那衆と書画や骨董などについて語らい、加賀の食材に舌鼓を打ちます。実際に使っていた文机などが「魯山人寓居跡いろは草庵」に残されています。
この家は吉野家旅館の元別荘で、魯山人が刻字看板を彫った仕事部屋や書斎、囲炉裏の間、茶室・展示室(土蔵)などが公開されています。
山代温泉には2つの共同浴場があります。吹き抜けの天井に大きな天窓がある現代的な「総湯」と明治時代の総湯を復元した「古総湯」です。
古総湯は、ステンドグラスや壁・床の九谷焼のタイルなど、当時の温泉文化を忠実に再現。2階には湯上り処もあります。
北陸では総湯を中心とした周囲の町並みを「湯の曲輪(ゆのがわ)」といいますが、そんなのんびりとした温泉風情も楽しむことができます。
お湯の泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉・塩化物泉など。温泉街のシンボルである総湯をぜひ訪ねてみてください(写真提供/石川県観光連盟)。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。