写真・文/石津祐介
カナダの中東部に位置し、トロントやオタワといった主要都市を要するオンタリオ州は、カナダの政治・経済・文化の中心であるだけでなく、自然豊かな数多くの観光スポットが点在する魅力的な旅先である。今回は中でも、世界遺産に登録されている「リドー運河」を中心に、オンタリオ州の様々な見どころを紹介しよう。
古き良き街、キングストン
今回、筆者の旅の拠点となったのは、オンタリオ州のキングストンという町。1841年から1844年の期間カナダの首都が置かれ、初代首相のジョン・アレクサンダー・マクドナルドの出身地としても知られている。
オンタリオ湖の北岸に位置するこの街は、モントリオールを経て大西洋に注ぐセントローレンス川と、首都オタワを水路でつなぐリドー運河の起点であり、かつては水運の拠点となっていた。
当時、イギリスの植民地であったカナダは五大湖を挟んでアメリカと敵対関係にあり、その侵略に備えて多くの運河を建設していた。物資輸送ルートであったセントローレンス川の封鎖に備え、そのバイパスルートとしてリドー運河は建設された。
リドー運河は全長202kmで、24カ所に47の水門を経て首都オタワへと結んでおり、2007年に世界遺産として登録された。
キングストンは小さな街だが、首都が置かれたこともあり歴史的な建造物が建ち並ぶ。また石灰岩で造られた白い建物が多いことから、ライムストーンシティーとも呼ばれている。
ここでは歴史的な建造物と新しい建物が組み合わさるように建てられており、新旧が調和しているのも特徴的だろう。
市庁舎裏の広場では定期的にマーケットも開かれており、オンタリオ州のメープルシロップや生鮮食品、生花、クラフトなど色々な物が売られており、街中の散策と共に立ち寄ってみたい。
キングストンの観光スポットを効率よく見るには、市内の名所を巡るトロリーツアーがおすすめだ。乗り降りが自由で、市庁舎やフォートヘンリーなど8カ所に停車する。
ガイドと市内を徒歩で巡るウォーキング・ツアーも行われており、こちらはじっくりと街を楽しむことができ、キングストンの歴史などを聞きながら、代表的な建築物やマニアックな路地裏などを散策する(解説は英語のみ)。
運河防衛の拠点フォートヘンリー
運河を防衛するために1873年に建設された要塞「フォートヘンリー」。セントローレンス川を見渡せる小高い丘の上に建てられ、城壁には多くの砲門が備えられている。要塞はアメリカの侵略に目を光らせ、長年カナダを守ってきた。
現在では内部が公開されており、多くの兵士が駐留した当時の兵舎や食堂などを見ることができるようになっている。
サウザンドアイランズクルーズ
オンタリオ湖からモントリオール、ケベックシティーを経て大西洋に流れ出るセントローレンス川。この川には、サウザンドアイランズと呼ばれる1,000以上の大小様々な島々が集まるエリアがあり、それぞれの島には別荘やホテルが建てられている。島の間が国境線となっており、北側はカナダのオンタリオ州、南側はアメリカのニューヨーク州となっている。サマーシーズンともなれば、両国から多くのバカンス客が訪れ賑わいを見せる。
これらの島々を船で巡るアイランドクルーズは人気があり、セントローレンス川沿いの港から様々なコースが用意されている。
キングストンから出港するアイランドクルーズは、ランチ付きのクルーズが人気で、約3時間のクルージングが楽しめる。港を出港すると丘の上に建つフォートヘンリーが見え、川幅は進むにつれて徐々に狭くなり、島がひしめくサウザンドアイランドへとたどり着く。ここでは小島に建つ小さなものから、城のような豪華なものまで様々な別荘を見ることができ、風光明媚な風景を楽しめる。
そして、ここはサウザンドアイランズドレッシング発祥の地としても知られており、アメリカのホテル経営者であるジョージ・ボルトが所有するボルト城のシェフが考案し、世に広まったと言われている。
運河と水運の拠点、古都キングストン。カナダの歴史を感じるこの街をじっくりと散策し、クルージングで風光明媚な景色に浸るも良しだ。
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今回はここまで。次回は、世界遺産「リドー運河」クルージングの様子とともに、運河沿いの街や豊かな自然を紹介していく。
協力:オンタリオ州観光局 http://www.ontariostyle.com/index.html
カナダ観光局 https://www.canada.jp
写真・文/石津祐介
カメラマン・ライター。旅行、アウトドア、野鳥、航空機などを中心に撮影、取材、執筆を行う。現在、埼玉県飯能市で田舎暮らし中。