取材・文/池田充枝
16世紀フランドルを代表する画家、ピーテル・ブリューゲル1世に始まり、150年にわたって画家を生み出したブリューゲル一族。
一族の祖であるピーテル・ブリューゲル1世は、雄大な風景やヒエロニムス・ボス風の版画の下絵で人気を博しました。彼の革新的な点は、現実世界を冷静に見つめ、人間の日常生活を何の偏見もなく、ありのままに表現することにありました。
ピーテル1世の長男、ピーテル2世は、父の作品の忠実な模倣作(コピー)を手がけ、父の作風を世に広めることに貢献します。一方弟のヤン1世は、父の自然への関心を受け継いで発展させ、多くの傑作を残しました。
そしてヤン2世やアンブロシウス、アブラハムといったヤン1世の子孫たちが、一族の作風を受け継いでそれぞれに活躍し、「ブリューゲル」はひとつのブランドとして確立されていきました。彼らが手がけた宗教画、風景画、寓意画、静物画など多岐にわたる作品のなかに一族の魂が脈々と受け継がれています。
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そんな類まれな画家一族の画業を系統立てて紹介する展覧会「ブリューゲル展 画家一族150年の系譜」が、東京都美術館で開かれています。(~2018年4月1日まで)
本展は、イタリアのコモ市を皮切りに、作品の入れ替えを行いながらイギリスやフランス、ドイツ、イスラエルなどを巡回して、日本にやってきました。日本では、東京都美術館を皮切りに5会場を巡回します。日本初出品となる貴重なプライベートコレクションを中心に選び抜かれた約100点を通じて、16、17世紀フランドル絵画の魅力に迫る展覧会です。
本展の見どころを、東京都美術館の学芸員、髙城靖之さんにうかがいました。
「本展には16世紀フランドル絵画を代表する画家ピーテル・ブリューゲル1世や、彼の息子、孫、さらにひ孫の世代まで、一族に連なる9人の画家の作品が展示されます。
ピーテル1世の長男であるピーテル・ブリューゲル2世が描いた《野外での婚礼の踊り》は、婚礼の宴で踊る農民たちを描いた作品ですが、同じ場面を描いた父の作品とよく似ているものの、花嫁が踊りに加わらずに奥のほうで座っているなど、父との違いも見られます。
一方、次男のヤン・ブリューゲル1世による《水浴をする人たちのいる川の風景》では、縦横ともに約20センチしかない小画面の中に、水浴びをする人や鳥に餌をやる人、散歩する人などが非常に緻密に描かれていて、細密描写を得意としたこの一族の伝統を伝えています。
また、ピーテル1世のひ孫で、イタリアで活躍したアブラハム・ブリューゲルの《果物の静物画ある風景》は、イタリアで流行した静物画のスタイルに、フランドルの細密描写を融合した作例です。
こうしたブリューゲル一族の作品が、これほど多く集まることは滅多にありません。また、出品作品の多くが、普段見ることのできない個人所蔵の作品で、そのほとんどが日本初公開です。貴重な機会ですので、ぜひ会場でこの画家一族の作品を味わってください」
ブリューゲル一族の作品群が圧倒的な迫力でせまる展覧会です。お見逃しなく。
【ブリューゲル展 画家一族150年の系譜】
会期:2018年1月23日(火)~4月1日(日)
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
開室時間:9時30分から17時30分まで、金曜日は20時まで(入室は閉室30分前まで)
休室日:月曜日(ただし2月12日は開室)、2月13日(火)
http://www.ntv.co.jp/brueghel/
取材・文/池田充枝