取材・文/関屋淳子
伊豆半島の西岸にある伊豆市・土肥(とい)温泉は西伊豆のなかでも最古で最大の温泉地です。
土肥というと土肥金山が有名ですが、江戸時代、金山採掘中に坑道から温泉が湧出したのが、この温泉の始まり。この湯に入浴したところ病気平癒したという故事があり、その元湯が市内の安楽寺に残されています。
温泉宿は海岸沿いや高台などに立ち、相模湾を一望できるところばかり。宿には露天風呂付きの部屋も多く、海に沈む夕陽を眺めながらの湯浴みも可能です。
泉質はカルシウム・ナトリウム‐硫酸塩、塩化物泉です。神経痛や筋肉痛に効能があり、さらりとした肌触り。源泉は6本あり、集中管理し、各宿に配湯されています。湯量も豊富で源泉掛け流しが主流です。
土肥といえば、恋人岬も有名です。海に突き出た富士見遊歩道の先端にあり、ここからは駿河湾越しに御前崎から富士山まで望めます。そして夕景が抜群!カップルでなくても、ひとりでも家族連れでも、ぜひ訪ねてみてください。
土肥から車で10分ほどのところに田子(たご)港があります。田子には古くから伝わる「潮鰹」があります。これは神事を兼ねた保存食で、「正月魚(しょうがつよ)」とも呼ばれています。
鰹を数週間、塩に漬け込み、伝統製法の手火山式焙乾製法で乾燥させます。荒くほぐしてお茶漬けやお吸い物、おにぎりなどに、また細かくほぐして旨味調味料として利用できます。西伊豆の漁港で育まれた逸品、旅のお土産にいかがでしょう。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。