選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
1984年モスクワに生まれ、2013年には最難関の一つとして知られるエリーザベト王妃国際コンクールで優勝した注目のピアニスト、ボリス・ギルトブルグの新しいアルバム『ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1、2番、他』が素晴らしい。(試聴はこちらから)
艶やかで、暗く深い音色を生かしながら、ここぞという箇所ではズシリと心に響く鮮やかな演奏を繰り広げる──そのスケール感は、かつてのロシアの偉大なピアニストたちの系譜を継承するといっても過言ではない。
V・ペトレンコ指揮による、輝かしい気品と愉悦あふれる、引き締まったオーケストラの演奏もいい。併録された弦楽四重奏曲第8番のギルトブルグによるピアノ編曲版は、作曲者の孤独な魂の闘いに肉薄する出来で、一層の迫力に満ちている。
【今日の一枚】
『ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1、2番、他』
ボリス・ギルトブルグ(ピアノ)、ヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィル
録音/2016年
発売/ナクソス・ジャパン
問い合わせ/03・5486・5105
商品番号/8.573666
販売価格/オープン価格(実勢価格約1290円)
選評/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ局「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金曜 18:00~22:00放送)。近著に『ルネ・マルタン プロデュースの極意』(アルテスパブリッシング)がある。
※この記事は『サライ』本誌2017年5月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。