取材・文/鈴木拓也
骨がもろくなって、骨折しやすくなる病気として知られる骨粗しょう症。閉経によって、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減り、骨の代謝異常が発生する、あるいは偏った栄養の摂り方や加齢によって骨粗しょう症になるというメカニズムが判明しており、幾つかの治療法が確立されている。
しかし、薬物療法には副作用があるなど、決定打となる治療法はないのが現状。そのため、若い頃から中高年期にかけての予防を心がける必要がある。
成長期の若者にとっての予防策は、十分な栄養を摂り、多少ハードなスポーツをすることによって最大骨量を増やしておくことであるが、中高年になると、今度は「骨貯金」の浪費を防ぐための運動と食事の二つが、なによりも大事になる。
1.適度な運動で骨密度の低下を防ぐ
骨は力学的な負荷がかからないと、その骨密度は徐々に低下する。ごろごろと寝てばかりのライフスタイルが、骨粗しょう症を招きやすいのはそのせいだ。ウォーキングは、誰でもできる運動で、骨に持続的な刺激を与え、脚の筋力を保持する意味でも最上の予防法になる。もちろんゲートボールやパークゴルフのような、歩行を伴う運動も好ましく、室内ではこまごまとした家事労働さえも、骨粗しょう症の有効な予防策となる。
2.カルシウム、ビタミンDを摂る
もっとも重要なのが、カルシウムの含まれた食事を十分に摂ること。体内のカルシウムの99%は骨に存在し、カルシウムが不足すると骨量は維持できなくなる。カルシウムの1日あたりの推奨摂取量は、50歳以上の男性で700mg、女性で650mgとなる。カルシウムは、乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆、海草に多く含まれるので、こうした食品を意識して摂るようにしたい。
また、カルシウムの吸収を促す、ビタミンDの含まれた食事も摂る必要がある。ビタミンDは、魚類やキノコ類に豊富に含まれているほか、日光を浴びることでも体内で合成される。高齢者になると家にこもりがちになるが、太陽の照っている日はできるだけ屋外に出る時間を持つとよい。くわえて骨の形成を促すビタミンKも必須ではあるものの、必要量は多くなく、野菜をほとんど食べない偏食でも続けないかぎり、不足する心配は少ない。
3.ミルクベーシックプロテイン(MBP)で骨密度を上げる
近年、運動と食事にプラスアルファする骨粗しょう症予防策として注目を浴びているのが、牛乳に含まれている「MBP」というタンパク質を主要成分としたサプリメントである。これには、骨代謝の異常によって骨が溶け出すのを防ぐだけでなく、骨密度を高める作用があることが分かっている。
今までは「骨密度は年齢とともに下がる一方」というのが医学の定説であったが、MBPがそれを覆したことになる。
毎日MBPを40mg摂ることで、半年~1年ほどで骨密度は3%上昇するという。しかし、MBPを40mg摂るには牛乳を800ml飲む必要があり、毎日これを実行するのはなかなか難しい。MBPをサプリメントとして商品化したものもあるので、利用する手もある。
MBP以外にも、「カルシウムを豊富に含むレモン果汁飲料を継続摂取」することで、中高年女性の骨密度を改善することが判明しており、いずれはトクホ扱いのレモン飲料も登場するかもしれない。
サプリメントは、運動や栄養とともに「骨粗しょう症予防の三本の矢」の一翼を担う存在として、今後クローズアップされると思われる。
参考資料:
『骨粗鬆症』(宮腰尚久著、伊藤宣監修/ミネルヴァ書房)
骨粗鬆症財団ウェブサイト
「MBP」研究会ウェブサイト
雪印メグミルクウェブサイト
文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。