
日本酒を購入する際、ボトルのラベルを見ると「純米大吟醸」「純米吟醸」「本醸造」など、さまざまな種類の表記があります。また、スーパーなどでは何も書かれていないお酒もあり、「これはいったい何なんだろう」と感じることもあるでしょう。日本酒の種類には、国が定めた分類や製造方法による違いがあり、それぞれに特徴があります。今回は、日本酒の種類について分かりやすく解説していきます。
文/山内祐治
知っておきたい日本酒の種類一覧
日本酒の種類は、酒税法によって明確に定義されています。日本酒の表示・分類は、国税庁の『清酒の製法品質表示基準』に基づき、「特定名称酒」と(それ以外の)「普通酒」に大別されます。
特定名称酒は8種類あり、さらに大きく2つのグループに分けられます。それは「醸造アルコールを添加するかどうか」という違いです。醸造アルコールを添加しないものには「純米」という文字が付きます。また添加するアルコールの総量にも、限度が設けられています。

これら8種類が特定名称酒として、ラベルに表記されています。また、これ以外のものが普通酒で、アルコール添加量についても、特定名称酒より制限が緩和されています。パックで出ているお酒もあり、比較的安価で購入することができます。
また、加工方法や季節表現などによって「生酒」「生貯蔵」「おりがらみ」「うすにごり」「ひやおろし」といった表記が加わることもあります。このようにアルコール添加の有無、加工方法、季節表現などさまざまな要素が組み合わさって、日本酒のラベルは構成されているのです。今回は主に特定名称酒8種類について解説します。
純米大吟醸 https://serai.jp/gourmet/1225151
生酒 https://serai.jp/gourmet/1228996
ひやおろし https://serai.jp/gourmet/1231621
日本酒の種類・ランクは精米歩合が要件のひとつ
特定名称酒の中でのランクは、主に「精米歩合」と「アルコール添加の有無」によって決まります。精米歩合とは、お米を磨いた後に残った割合のこと。例えば精米歩合60%なら、40%を磨いて60%を磨き残したということです。
大吟醸や純米大吟醸は精米歩合50%以下、吟醸や純米吟醸は60%以下と定められています。お米を磨くには手間、時間、コスト(電気代など)もかかるため、よく磨かれたお酒ほど高価格になる傾向があります。
よく磨かれたお酒は「吟醸造り」という丁寧な製法で作られ、華やかな香りや洗練された味わいを持つことが多いため、蔵の中でも最も価値の高いお酒として位置づけられています。ただし、ランクが高いお酒が必ずしもすべての場面で最適というわけではありません。料理や飲み方、好みによって、どの種類がベストなのかは変わってくるのです。
また「特別」という文字が付く特別純米や特別本醸造は、純米酒と純米吟醸の中間、または本醸造と吟醸の中間に位置するお酒です。この「特別」を名乗るためには、特別な醸造方法や特定の酒米を使用するなど、蔵独自の工夫が必要となります。
・純米大吟醸 精米歩合50%以下まで磨いた米で造る、華やかで洗練された最高級の純米酒
・純米吟醸 精米歩合60%以下で造る、フルーティーな香りと米の旨味を併せ持つ純米酒
・特別純米 精米歩合60%以下または特別な製造方法(蔵独自の要件の明示が必要)のいずれかを満たすもの。
・純米酒 米・米麹・水のみで造る、米本来の旨味とコクがしっかり感じられるお酒
・大吟醸 精米歩合50%以下で造る、華やかな香りとすっきりした味わいの最高級酒
・吟醸 精米歩合60%以下で造る、上品な香りと軽快な飲み口が特徴のお酒
・特別本醸造 特別な醸造方法や酒米を使用した、本醸造と吟醸の中間に位置するお酒
・本醸造 精米歩合70%以下で造る、キレの良いすっきりとした味わいの食中酒向けお酒
日本酒の種類の違いは、味わいにも現れる
日本酒の種類による違いは、味わいや香りに大きく影響します。この違いを理解することで、料理との相性も見えてきます。
純米酒系は醸造アルコールを添加しないため、お米本来の旨味やエキス分がしっかりと感じられる、味わい深いお酒が多い傾向にあります。一方、本醸造や吟醸、大吟醸などアルコールを添加したお酒は、すっきりとした飲み口や後切れの良さが特徴です。
さらに精米歩合を低める(よく磨く)ことで、華やかな「吟醸香」が生まれます。使用する酵母や蔵の造りの方針によって異なりますが、より洗練された香りや味わいを楽しむことができます。
一方で、普通酒は特定名称酒には該当しませんが、カジュアルなお酒として日常の食事に寄り添う間口の広さがあります。
このように、種類の違いは単なる分類だけでなく、お酒の分類の違い、製法の違い、加工の違い、季節表現の違いなど、幅広い意味を持っています。それぞれの違いを知ることで、より深く日本酒を楽しめるようになるでしょう。
日本酒の種類。飲みやすさで選ぶならこれ
はじめて日本酒を飲む方々が飲みやすいと感じるのは、柔らかな甘さとジューシーで華やかな香りがあり、フルーティーで飲み口の良いタイプではないでしょうか。例えば、「寒菊」「AKABU」といった銘柄は、このタイプの代表格と言えるでしょう。
すっきり系がお好みなら、キレがありさっぱりとした味わいのお酒がおすすめです。「紀土」「磯自慢」「日高見」などは、残糖感が少なく瑞々しい、切れ上がりの良いタイプ。本醸造や吟醸規格のお酒にも、こうしたタイプが多く見られます。
食事と一緒に楽しむ“食中酒”をお探しなら、お米のエキス分がしっかりとあり、ご飯の代わりになるようなお酒が適しています。純米酒系で少し落ち着いたお酒、常温や燗で飲んでも美味しいタイプがおすすめです。「酔鯨」「浦霞」「大七」といった銘柄は、食中酒として優れた特性を持っています。
最近では、アルコール度数の低い「低アル原酒」も人気です。アルコール度数が低い割にお米のエキス分がしっかりしており、満足度がありながら飲みやすいという特徴があります。
飲みやすさは温度によっても変わります。冷酒向き、常温向き、熱燗向きなど、それぞれのお酒に適した温度帯がありますので、購入時に酒販店に相談してみることをおすすめします。

日本酒の種類。その値段の違いを理解する
日本酒の値段は、製造にかかるコストと手間によって決まります。よく磨いて、少量生産で、丁寧な造りをしたお酒ほど、価格は高くなります。
精米歩合50%以下、あるいはそれ以下まで磨き込んだ純米大吟醸や大吟醸は、高価格帯になります。一方、醸造アルコールの添加量を増やして大量生産される普通酒は、比較的安価な価格帯で提供されています。
最近では“熟成”という新たな付加価値も生まれています。常温熟成と低温熟成があり、特に低温熟成は冷蔵庫や氷温庫での保管が必要なため、さらにコストがかかり、そのコストが価格に反映されます。
また、原料となる酒米の価格上昇も、日本酒の価格に影響を与えています。ただし、多くの蔵元は企業努力によって、精米歩合を多少上げても美味しく作れるような工夫を重ねています。
これまで日本酒は比較的安価だと言われてきましたが、その品質と製造にかかる手間を考えると、適正価格への移行は自然な流れです。日本酒の価値を正しく理解し、品質に見合った価格を受け入れることが、日本酒文化を支えることにもつながります。
日本酒のおすすめの選び方と楽しみ方
日本酒を選ぶ際は、まず自分の好みのタイプを知ることから始めましょう。居酒屋で美味しいと感じたお酒があれば、その銘柄を覚えておき、同じタイプのお酒を探してみるのも良い方法です。
酒屋さんで購入する際は、遠慮せずに相談してみてください。「フルーティーなものが好き」「すっきりした味わいが良い」「魚料理に合わせたい」など、具体的に伝えることで、最適なお酒を提案してもらえます。
日本酒の楽しみ方は、種類を知ることで大きく広がります。純米酒系とアルコール添加系の違い、精米歩合による味わいの変化、温度帯による表情の変化など、理解が深まるほど、お酒の楽しみ方の解像度が上がっていきます。
そして季節によって楽しめるお酒も変わります。春は新酒、夏は生酒、秋はひやおろし、冬は熱燗と、四季折々の日本酒を味わうのも醍醐味のひとつです。
また、料理との相性を考えることも重要です。淡白な料理には淡麗なお酒を、濃厚な料理には旨味のあるお酒を合わせるなど、食事とのペアリングを楽しんでください。
まとめ
日本酒の種類は一見複雑に見えますが、基本的な分類を理解すれば、自分好みのお酒を見つけやすくなります。普通酒と特定名称酒の違い、純米酒系とアルコール添加系の違い、精米歩合によるランクの違いなど、それぞれに意味があり、味わいに影響を与えています。
日本酒選びで迷ったときは、まず自分の好みを把握すること、そして酒販店に相談することが大切です。種類による違いを少しずつ理解していくことで、日本酒の世界はさらに奥深く、楽しいものになっていきます。
ぜひ、さまざまな種類の日本酒を試しながら、自分だけのお気に入りを見つけてください。日本酒の魅力は、知れば知るほど広がっていくはずです。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。
構成/土田貴史











