文/鈴木拓也

誰しも40歳前後になると、いやでも「加齢」を意識し始める。
なかでもリアルに意識されるのは、近くを見る視力の衰えだろう。平たく言えば「老眼」。眼球の水晶体が弾力性を失い、ピント調節機能が落ちることで起きる症状だ。水晶体の細胞は入れ替わりしないため、もとに戻ることはない。その弾力性を取り戻す新薬が開発中だが、実用化への道のりは遠い。
老眼とうまく折り合いをつけ、目の健康を長く保つ方法を提唱するのは、あやし眼科クリニックの伊勢屋貴史院長だ。先頃刊行された著書『100歳アイ 名医が教える「100歳までくっきり見える黄金ルール」』(ダイヤモンド社 https://www.diamond.co.jp/book/9784478123553.html)では、そうした耳より情報を網羅している。今回は、その内容の一部を紹介しよう。
1.25D以下の累進レンズから始める
まず、老眼になり始めた人に、伊勢屋院長がすすめる対処法がある。
それは、「累進レンズ」の眼鏡の使用。一般的に遠近両用眼鏡とも呼ばれるが、1枚のレンズに複数の度数が組み込まれているのが特徴。レンズの上側で遠くを見て、下側で近くを見るための度数となっており、最初は視線移動に手間取るが、すぐ慣れる。
伊勢屋院長は、この眼鏡を「なるべく早い段階」で導入するようアドバイスする。通常の老眼鏡と違い、見る距離によってつけたり外したりがないのが、なんといっても便利だからだ。
ただ、購入にあたっては注意点があり、その一つが最初から「理想の度数」にしないこと。具体的には、「1.25D以下にしておくべき」だと言う。これより高い度数では、下に目を向けた際、「足元がぐらぐらするように感じる」違和感をおぼえる可能性がある。1.25D以下に慣れたうえで、高い度数に切り替えることで、その違和感を回避できるそうだ。
スマホの見過ぎがもたらす目のトラブル
老眼に関連して、最近ホットなキーワードに「スマホ老眼」がある。
症状としては、近くの文字が見えにくくなるなど、通常の老眼と共通する点が多い。しかし、若い人もかかるのが大きな違いだ。スマホ老眼の原因は、ずばりスマホの見過ぎ。近くの画面を見るには、水晶体を膨らませる必要があるが、このとき目の中の毛様体筋が働く。長時間見続ければ、毛様体筋は疲労し、水晶体の膨らみを維持できなくなる。こうしてスマホ老眼が起きる。
通常の老眼が進んだ中高年が、スマホ老眼にも見舞われると、影響は甚大。伊勢屋院長は次のように記している。
目の老化を痛感し、集中できなくなり、仕事のスピードが落ち、ミスを連発し、あげくの果てにぐったりと疲れ果てる。中高年にとってスマホ老眼は、若々しさとかけ離れた「ザ・お年寄り」といった状態を招く存在。まさしく「弱り目にたたり目」ですね。
(本書149pより)
そうならないための対策として、本書では「五つのポイント」が掲げられている。その一つに、下目使いで見下ろすというのがある。顔の正面より少し下にすれば、自然と下目になるが、これには、「まぶたを持ち上げる力を節約する」といった効用がある。この他、目とスマホを30センチは離す、意識的にまばたきするなどが記されている。どれも簡単なので、五つ全部を組み合わせて習慣化するといいだろう。
トレーニングで老眼に伴う諸症状を緩和
眼球やまぶたを動かし、正しく機能させるには、外眼筋や毛様体筋など多くの筋肉が動員される。モニターを見続けたり、焦点の合わないままものを見ることで、そうした筋肉は疲弊し、画像処理を司る脳も疲労していく。これを放置すれば、日常生活にまで悪影響を及ぼしかねない。
そのトラブルを改善するトレーニングが、本書では12種類取り上げられている。どれもすぐ覚えられ、短時間でできるので、やってみない手はない。その一つ、「指ぴたトレーニング」を紹介しよう。
1. 利き手でない方の人差し指に、ペンで直径1センチほどの〇を描く(眼鏡の人はできれば外す)
2. 腕が伸びるいっぱいまで遠ざけて人差し指の〇を見る
3. 〇を凝視しながら指を目に近づけて、〇にピントが合うところで止める
4. その位置から視界に入るぎりぎりまで上下左右に指を動かす(顔は動かさず、目だけで指の動きを追う)
5. 40秒間、行う
6. 20秒間、2メートル以上遠くを見つめる
(本書179~180pより)
これには、上下左右に動く指を目で追うことで、眼球を取り巻く六つの外眼筋がバランスよく伸縮され、最後に遠くを見ることで、毛様体筋と外眼筋をリラックスさせる効果がある。
本書にはこれ以外にも、睡眠・食事を含む目に良い生活習慣など、老眼と付き合いながら、自分の目で生きていくための方法が盛りだくさん。元気な目の百寿者を目指すなら、読んでおきたい1冊だ。
【今日の健康に良い1冊】
『100歳アイ 名医が教える「100歳までくっきり見える黄金ルール」』

定価1650円
ダイヤモンド社
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram (https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。











