文/鈴木拓也

画像はイメージです。

日本における患者数は、いまや約2000万人といわれる慢性腎臓病。

かつては、この病気にかかれば、家で安静に過ごし、食事も厳格に管理するなど、生活に大きな制約を課せられた。

しかし、いまやそうした療養指針は、ほぼ180度転換。適度に運動することが推奨され、食事制限もずいぶん緩やかになった。

この新たな指針に基づくメソッドを「腎臓リハビリテーション(腎臓リハビリ)」と呼び、提唱してきたのは、東北大学の上月正博名誉教授だ。

上月名誉教授は、腎臓は適切にケアしていけば、「100歳を超えるまで健康をキープして長生きすることも夢ではない」と語る。そして、このメソッドを1冊の書籍『腎臓大復活 100歳まで人生を楽しむ「強腎臓」の作り方』(東洋経済新報社 https://str.toyokeizai.net/books/9784492048153/)にまとめている。

今回は本書をもとに、誰でもできるセルフケアの一部を紹介しよう。

「らくらく筋トレ」で体づくり

まずは、メソッドの中でも重要性が高い運動から。

これは、「腎臓ウォームアップ体操」「らくらく筋トレ」「腎活性ウォーキング」の三本柱からなる。

「腎臓ウォームアップ体操」は、筋肉・関節をほぐして体を温める準備体操の位置付け。ここでは割愛するが、最初にこれを行ってから、「らくらく筋トレ」に入る。これはまさに、らくにできる筋トレ。何種目かあって、その1つが「壁腕立て伏せ」。以下の要領で試しにやってみよう。

1. 肩幅に足を開いて立ち、壁から50~70cm離れて手のひらをつく。このとき、ひじを真っ直ぐに伸ばしておく。
2. 鼻から息を吸いながら、5秒かけて両ひじを曲げる。両足のかかとが床から離れないように注意する。
3. 口から息を吐きながら、5秒かけて腕を伸ばす。

これを5回繰り返して1セットとし、1日に2~3セット行う。これだけでも、上半身の筋肉を効率よく鍛えることができる。

早めのペースのウォーキングを習慣化

そして、腎臓リハビリで一番の「目玉」とされるのが、「腎活性ウォーキング」。血流を良くし、腎臓の働きを活性化するためには必須の運動だという。

やり方自体は簡単だ。週3~5回のウォーキングを1日あたり30~60分するだけ。これを1週間にトータルで150~180分になるように行う。

一度に30分歩くのもきついという方は、5分とか10分といった単位で細かく分けてもいいし、悪天候などで週に何日もできない場合は、ある日にまとめて長時間するのでもOK。

そして、ウォーキングの際に注意したいのは「強度」だ。これは、「息が切れるか切れないかというレベルの早歩き」となる。ジョギングのようなペースではきつすぎ、散歩のようなペースではゆるすぎ、その中間あたりの「隣の人とどうにかこうにか話せるくらい」の早歩きを目指す。

歩行時のフォームも大事で、「あごを引き、正面を見て視線はやや遠めに」「背すじを伸ばし、肩の力を抜く」などアドバイスされている。

無機リンを含む食品添加物は要注意

もう1つ、運動と並んで健康維持の両輪とされているのが食事だ。

一昔前は、「あれもこれも食べてはダメ」と医師や管理栄養士から厳しい節制を要求されたものだが、今は違う。

食生活の制限はあるにはあるが、「手抜きでアバウトぐらいがちょうどいい」と、上月名誉教授は説く。

例えば、塩分の摂りすぎは腎臓に良くないのは確かだが、「みそ汁と漬物をやめる」だけでも、だいぶ減塩できる。これもハードルが高いなら、まずどちらかをやめることから始める。

糖質も、あらかたカットではなく、甘い飲み物やお菓子を控えてみて、我慢できないなら「週に1度の楽しみにする」のでかまわないとも。

むしろ、より警戒すべきは「食品添加物中のリン」だという。リンの過剰摂取は、腎臓に大きなダメージを与えるからだ。リンは、大きく有機リンと無機リンにわかれるが、特に注意したいのは、無機リンのほう。有機リンは、広く食材に含まれているが、吸収率は20~60%とさほど大きくはないし、肉・乳製品を多少減らすくらいで大丈夫。

一方、無機リンは、食品添加物に含まれているが、吸収率は90%以上と非常に高い。そのため、意識しないとすぐ過剰になりやすい。本書には、その対策が記されているが、第一にソーセージやハムといった加工肉、かまぼこやちくわといった加工魚肉はなるべく控える。こうした食品は、添加物が多いからだ。もし食べたくなったら、下ゆでや湯通しをして添加物を減らしておくのが有効。

そのほかの食品については、原材料表示に「リン酸塩」など「リン」を含むものがあるか、「酸味料」や「乳化剤」といった「〇〇料」「〇〇剤」が多くないかを確認する。これらは、無機リンの含有量が多いので避けたほうが無難だ。

油断してはならない40~50代

本書には、年代別の腎臓ケアのポイントも解説されている。「サライ.jp」の読者層でもある40~50代について見てみると、数人に一人は慢性腎臓病の予備軍だそうで、「自分はまだまだ健康」などと、過剰な自信を持つのは禁物だ。

上月名誉教授は、油断すると「人生を狂わせる事態につながりかねない」と言い、次のように忠告する。

ですから、40代、50代は、健診をしっかり受けるのはもちろん、健診の結果表からeGFRを算出して「いまの自分の腎機能がどの程度のレベルにあるのか」をしっかり把握しておくようにしてください。また、再検査や要治療となったら3か月以内に受診することをおすすめします。1年後などに時期を引き延ばしていると、その間に腎機能低下が進んでしまう場合も少なくありません。(本書195~196pより)

もし、慢性腎臓病の診断が下ってしまったら、素直に治療を受け、腎臓リハビリもスタートする。とにかく、後回しをしないことが肝心となる。

* * *

腎臓は、加齢や生活習慣によって誰しも衰えていく臓器だが、健やかさを長く保つことは可能だ。幸せな百寿を迎えるためにも、本書を読まれケアを始めることをすすめたい。

【今日の健康に良い1冊】
『腎臓大復活 100歳まで人生を楽しむ「強腎臓」の作り方』

上月正博著
定価1650円
東洋経済新報社

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram (https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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