文/印南敦史

新しいことを始めるか否かという局面では、ついつい否定的になってしまいがちだ。ましてや、それが「おりがみを始めるべきか」ということであれば、「いやいや、子どもじゃあるまいし、自分には関係ないから」と感じてしまっても無理はないだろう。
だが、もしかしたらそれは単なる勘違いかもしれない。事実、『脳科学でわかった! 80歳からでも成長する もっと脳活おりがみ』(伊達博充 著、西 剛志 監修、あさ出版)の著者は、自身の経験に基づいて次のように述べている。
ことの発端は、80歳のとき、当時4歳だった孫にせがまれて、恐竜のおりがみを折ったこと。以来、創作おりがみにはまり、毎日おりがみを折るようになったのです。
私は87歳の現在でも、一級建築士、設計事務所代表という肩書をもち、現役で仕事をしています。おりがみにはまったことで、創作おりがみ作家という肩書が増えた上、86歳のときには、人生初の著書『脳科学でわかった! 80歳からでも若返る すごい脳活おりがみ』を出させていただくまでになりました。(本書「はじめに」より)
結果的には同書が大ヒット。「もっと脳活おりがみを知りたい」というリクエストも届いたため、2冊目にあたる本書を上梓することになったというのである。
しかも、おりがみを折り始めてからというもの、年を追うごとに「脳がどんどん柔らかくなっている」と感じるそう。いろいろなアイデアが湧きやすくなり、70代のころよりもやる気に満ちあふれてきたというのだ。
このことについては、本書の監修者である脳科学者の西 剛志氏も「伊達さんはおりがみを折ることで、脳がどんどん活性化しているんですよ。おりがみのように細かく手を動かすことが、脳の老化防止に役立つという証拠もたくさんあります」と指摘している。
指先の運動が脳の働きを活性化させるということはよく知られるだけに、充分納得できることではないだろうか。
【伊達流創作おりがみの作り方】
1 折りたいものを決める。
2 図鑑やインターネット、漫画やイラストを見て、特徴を調べる。
3 頭の中に対象の動物の雰囲気を思い浮かべる。
4 やっこさんベースか鶴ベースか、どちらがふさわしいかを考え(筆者注:これについては本文で解説されている)、折り始めてだいたいのカタチを作る。
5 頭の中のイメージや雰囲気と合わせながら、手の中で細部を整え、完成。
(本書「はじめに」より)
たしかにこうしたプロセスを踏めば、おりがみを脳活として活用できそうだ。ここでは一例として、誰にとっても馴染み深い「紙ヒコーキ」に注目したい。

紙ヒコーキがいいのは、簡単に折れる上、自分なりに「ほんの少しの工夫」を加えて、「ああだこうだ」と試すことで、長く飛んだり、速く飛んだりするところです。手先を使う上、「ほんの少しの工夫」をする、つまり、アタマを使うので、脳活にもいい気がしています。(本書80ページより)
紙ヒコーキはどんな大きさの紙でも折れるが、手軽で折りやすく、飛ばしやすいのはA4の大きさだそう。もちろんコピー用紙でも、広告のチラシでもOKだ。


こちらは、アレンジ型。


折り方のポイントはバランス。先頭の部分を何度か折って重心を変えてみたり、翼の幅を変えるなどして、“いちばん遠くへ飛ぶ”“いちばん長く飛ぶ”究極のバランスを見つけることが大切だということだ。
あれこれ試してみれば理想的なバランスを見つけられるだろうし、紙ヒコーキに魅了された子ども時代の記憶も蘇ってくるかもしれない。

もっと脳活おりがみ』
伊達博充 著、西 剛志 監修
1540円
あさ出版
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。
