ノジマステラ神奈川相模原    笹井一愛(ささい・ちなり)選手

日本初の女子プロサッカーリーグ 、WEリーグに加盟するノジマステラ神奈川相模原のFW(フォワード)として、攻守にわたって活躍しているのが、トップチーム昇格から3シーズン目を迎えた、背番号9番の笹井一愛選手だ。167cmの長身と長いリーチ、スピードをいかした攻撃的なドリブルで観客を沸かせ、相手の予測できない動きで試合の流れを変えていけるストライカーに成長した。

この夏には補聴器メーカー、ソノヴァのアンバサダーに就任。先天性難聴を乗り越え、ピッチで輝きを放つ彼女の姿は、多くの人々に勇気を与えている。

挑戦心を忘れず、毎日を自分らしくアクティブに取り組む笹井選手が、サッカーのこと、きこえの課題などを語ってくれた。

「辞めようと思ったのは一度だけ」。壁を乗り越えて夢をかなえた

──サッカーはいつから始められたんですか?

「本気でサッカーをやりたいと決意したのは、2011年、なでしこジャパンのワールドカップ初優勝がきっかけです。選手たちのプレーを見て、『かっこいい』、『キラキラしている』と心を動かされました。『いつか、私もあの舞台に立ちたい』。そんな思いがふくらんで、小学2年生で地元の少年サッカーチームFCカルパに入部しました」

──サッカーのどんなところに惹かれましたか?

「努力した分だけ結果が出るのが、サッカーの大きな魅力です。練習がきつくても、試合で点が取れると『無駄じゃなかった』と実感でき、大きな喜びに変わりました。サッカーをするのがとにかく楽しかったですね。今でも覚えているのが、小学校6年生の最後の大会で、試合終了間際に決勝点を決めてチームを勝利に導くことができたことです。ゴール自体の記憶はあいまいですが、ゴールを決めて振り返った時、キーパーを含めた全員が私に駆け寄ってきてくれたことが強く心に残っています。小学校時代で一番うれしかったゴールでした」

──いい結果を残せたことあり、中学進学と同時に、ノジマステラ神奈川相模原のアカデミー(育成組織)であるアヴェニーレ(U-15)に入団を果たしました。

「入団はできましたが、当時の私は身長が150cmとチームの中では小柄で、しかもアヴェニーレはレベルが高くて、中1の時は30人の登録メンバーにも入れず、ひたすらベンチから応援するだけの毎日でした。試合に一度も出ることなく終わった夏の全国大会の後、『このままじゃダメになる』と奮起し、通っていた中学校の男子サッカー部に入部しました。正面からぶつかっても勝てないかもしれない。でも、相手をかわす、抜き去る、といったスピード感のあるプレーを磨けば、試合に出られるのではないかと考えたからです。

どのぐらい技術がアップしたかはわかりませんが、男子と一緒に練習していたという経験が、大きな自信につながりました。そのかいあって、中学2年生からは全国大会でもスタメンで出場できるようになりました」

高校3年生でWEリーグにデビューしプロとして初ゴール

──その後、ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ(U-18)にも昇格しました。

「スムーズではなかったですね。昇格できる選抜メンバーは15人中8人。『ドゥーエに上がりたい』という意思はしっかり伝えたものの、実際はまったく自信がありませんでした。

サッカーが大好きで、プレーが楽しく、それまで一度も辞めようと思ったことはありませんでしたが、この時だけは『もし昇格できなかったらサッカーを辞めよう』と決めていました。もしあの時選ばれていなければ、私のサッカー人生は終わっていたと思いますから、本当にラッキーでした」

2022年12月3日、ホームの相模原ギオンスタジアムで開催されたWEリーグ第5節の仙台戦で笹井選手は初ゴールを決めた。c)Nojima Stella Kanagawa Sagamihara

──ドゥーエ入団後の活躍は目覚ましかったですね。高校3年の時に育成組織TOP可選手(クラブの育成組織に所属しながら、WEリーグの公式戦に出場することが可能)としてトップチームに登録され、WEリーグの公式戦にデビューを果たしました。

「WEリーグの試合に出場した時は、初ゴールを先制で決められたのが最高にうれしかったです。高校時代にプロでゴールを決めたいという目標も達成することができました」

──笹井さんの学生時代はサッカーボールとともにあったということですね。

「とにかくボールがないと落ち着かないんです。修学旅行で行った沖縄にもサッカーボールを持っていき、いつも隣に置いていましたから(笑)」

──今後はどんな選手を目指しますか。

「目標は三笘薫選手です。三苫選手のプレーを見ているとワクワクしてきます。私も『ちなりがボールを持ったら何をしてくれるだろう』と、みなさんが楽しみにしてくれる選手になりたいですね。そして、『ちなりがいれば勝てる』、『ちなりがいるから大丈夫』と思ってもらえるような、チームにとって不可欠な存在を目指していきたいです」

みんなの支えがあったからこそ、サッカーを続けられた

──難聴であることでサッカーを続けることに不安はありましたか。

「難聴だからといって両親が私を特別扱いしませんでしたから、小さい頃からあまり気にしたことはなかったです。『これも自分らしさ』のように思ってきました。

ただ、難聴のストレスを感じることなく、楽しく伸び伸びとサッカーを続けられたのは、家族をはじめ、チームメイトや監督、コーチ、ファンの方々がごく普通に接してくれたことが何より大きかったですね。支えてくださったみなさんには感謝しかありません」

──試合中に気をつけていることはありますか。

「試合中は観客席からの声援も凄くて、ベンチにいる監督やコーチの声はほとんど届きません。まったく聞こえないわけではないのですが、ことばとして理解することが難しい。

コーチが近くの選手に指示を出し、その選手から私に伝えられることもあるし、プレーが切れた時やハーフタイム中に、直接コーチに指示内容を確認することもあります。

私は読唇術には自信があるので(笑)、試合中はチームメイトの口の動きを読み取って状況を理解している部分もあります」

──試合中にきこえで困りごとはありますか。

「守備においてはさまざまな方向から声をかけられますが、ことばがはっきりと聞き取れず、プレーの判断が難しい場合があります。入団後はチームメイトの動きを見ながら自分で判断して動けるようになり、経験の積み重ねで徐々に的確な判断ができるようになってきました。

私のプレーに合わせて周りの選手が連動してくれる、というスタイルでプレーするケースも増えました」

──笹井さんのプレーを見て勇気づけられている方もいると思います。メッセージをいただけますか。

「間違いなく言えるのは、努力をし続ければ夢は必ず叶うということです。サッカーが好きで、誰よりも練習を積めば、目の前にある壁も必ず乗り越えられると思います。私がプレーでそれを証明していきたいですね。ドリブル突破でゴールを決めるシーンを期待していてください」

彼女の躍動感のあるプレーと眩しい笑顔は、これからもチームやファンに明るさとポジティブなエネルギーを届けてくれる。

笹井一愛(ささい・ちなり)プロフィール
2004年10月12日生まれ。神奈川県横浜市出身。小学2年生の時「FCカルパ」に入団。ノジマステラ神奈川相模原アヴェニーレ(2017~2020年)、ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ(2020~2023年)を経て、2023年にノジマステラ神奈川相模原に昇格。2022年からWEリーグに出場。U-20日本女子代表「FIFA U-20 女子ワールドカップ コロンビア 2024」のメンバーにも選出された。

笹井さんが装用する新しい補聴器のフィッティングに同行

完全防音の部屋に移動しヘッドホンを使った聞こえ方の測定をする笹井選手。

笹井選手は、新しい補聴器『フォナック ナイーダ ルミティ』のフィッティングのため、補聴器専門店『オーディオ・ノバ横浜店』を訪れた。認定補聴器技能者の資格を持つスタッフによるきこえの調整が丁寧に行われた。新しい補聴器を約1週間使用した後、笹井選手は率直な感想を語ってくれた。

「以前の補聴器では、スマホで通話中や音楽を聴いているときに、周りから話しかけられても気づきませんでした。でも、この新しい補聴器は、両方の音が今までに比べはっきり聞き取れるんです」

聞こえづらさから電話をためらっていたこともあったそうですが、今ではより気軽にかけられるようになったと言う。

さらに、ノイズキャンセリング機能の進化にも驚いたと話す。

「風切り音がほとんどなくなり、日常の会話がとてもしやすくなりました。お風呂と寝るとき以外は、ずっと着けています」

取材当日もフィールドでも周りに元気を与え、笑顔が絶えない笹井選手。彼女の活躍はいつも周りの仲間と共に、補聴器がサポートしている。

新しい補聴器『フォナック ナイーダ ルミティ』を装用。Bluetoothでスマホとつなぎ大好きな『グリーンボーイズ』の曲を楽しむ笹井さん。
チームメイトや家族とのグループ会話中に、一人ひとりの声をクリアにして補聴器に届ける多目的のワイヤレス マイクロホン『ロジャー セレクト』を補聴器と接続する笹井選手。

オーディオ・ノバ 横浜店
横浜市神奈川区鶴屋町2-25-1 横浜YS西口ビル3階(横浜駅西口より徒歩7分)
営業時間:9:00~17:30
定休日:日曜、祝日
電話:045・410・0047

ソノヴァ社の補聴器が笹井選手のサッカーライフをサポート

笹井一愛選手がアンバサダーを務めるソノヴァ・ジャパンは、スイスに拠点を置く補聴器の世界的なリーディングカンパニーの日本支社。ことばと雑音を切り離し、周囲の声をよりクリアに届ける世界初のAI搭載チップ「DEEPSONIC™」や、周囲の環境に最適な音を自動調整する「オートセンスOS 6.0」など、常に最新技術を開発している。

フラッグシップモデル「フォナック オーデオ インフィニオ スフィア」をはじめ、多彩な補聴器をラインナップし、多くの人々のきこえをサポートしている。

笹井選手が装用する「フォナック ナイーダ ルミティ」。ことばの理解を自動でサポートする「フォナック スマートスピーチ テクノロジー」に加え、360度からの安定したきこえを期待できる。

問い合わせ先/ソノヴァ・ジャパン株式会社(フォナック補聴器) 0120・06・4079

 

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