
元NHKアナウンサーであり、2000人以上の方に教えてきた墨屋那津子さんが上梓した『あなたの話が「伝わらない」のは声のせい』(飛鳥新社)では、「自分本来の声」を活かして話すことで、内容は変えずに「伝わる」話し方になるメソッドを公開。これまで、ありそうでなかった“読むボイトレ本”として注目を集めています。
墨屋さんのボイトレは、声の出し方を少し変えるだけで、見違えるようにビジネスもプライベートもうまくいくと評判です。従来の声本・話し方本に多かった「抑揚をつける」「くっきりはっきり」「声を作る」といった「偽の自分」を演じる必要は一切なし! 本書から、声の使い方や話し方のコツなど、トレーニングをする前に知っておきたい「声」や「話し方」についてご紹介します。今回のテーマは「声の重要性」です。
※本書には各所にQRコードが掲載されています。スマートフォンでコードを読み取ると、筆者による1分程度のレッスン音声を聞けます。
文/墨屋那津子、イラスト/みわまさよ
「言っても伝わらない」理由とは
実は、話し方の本ではあまり触れられていませんが、話し方より、話の中身より、まずは「声」が重要なのです。声が受け入れられないと、どんなに上手に話しても相手に届かないことがあります。実際、声が心地よいと、相手の心にスーッと言葉が入り、安心感や信頼感を与えるとわかっています。アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」によると、コミュニケーションにおいては聴覚情報(声)が約4割の割合で影響を与えるとされています。

言語情報(話す内容)は1割未満なのです。だから、まずは最初に重要になるのは「声」なのです。声には言葉だけでは伝わらない、コミュニケーションの土台(信頼感や説得力)が隠れています。
にもかかわらず、ほとんどの人は声にあまり関心がありません。もしかしたら、「声なんてそんな簡単に変えられません」とか、「自分の声は“イケボ”ではないし、自信ありません」と思っていませんか? 声に自信がない方でも大丈夫。誰でもすぐによい方向に変えられます。厳密に言うと、声を変えるのではなく、「声の“出し方”を変える」「声の“印象”を変える」だけ。これはどなたでも簡単にできますし、ちょっと変えるだけで、人からの印象も劇的に変わるのです。

あなたの声は世界一の“いい声”です
私のボイトレを受けた人のほぼ全員が、最初に「自分の声が好きじゃない」と言います。しかし、私からすると「よくない声」の人なんて一人もいません。全員が世界一の“いい声”なんです。
過去に誰かから言われた声や話し方についての指摘が心に残り、ずっと自信がないままの方もいるようです。たとえば、クラスで発表している最中に「声が聞こえません(笑)」とからかわれた。友達から「聞きづらい」と言われた──。ボイトレの生徒さんにもこういう体験をした人は少なくないですし、私も似たようなことを10年以上引きずりました。
しかし、考えてみてください。過去にあなたに声や話し方の指摘をした人は声や話し方のプロでしたか? あなたの人生を左右するほどの人? 声は呼吸そのものが原動力なので、心をしばっているモヤモヤを解消すれば、その瞬間に大きく変わります。自信が戻るのです。そもそも、声が高くても低くても、どんな声でも、それが自然にリラックスして出てくる声であれば、その声はあなたにとってかけがえのない価値があります。
あなたの声は、あなたの体から生み出される「生命の音」であり、唯一無二のものなのです。そうした過去の指摘から自由になって、自分の声に自信を持っていいのです。
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あなたの話が「伝わらない」のは声のせい
墨屋那津子
飛鳥新社 1,650円(税込)
墨屋那津子(すみや・なつこ)
アナウンサー(元NHK)/キャリアカウンセラー
石川県生まれ。NHK『おはよう日本』『ニュースウオッチ9』ニュースリーダー、NHK E テレ『100 分de 名著』語り手などで活躍。30年以上にわたる幅広い経験を通じて培った「声のキャリア」と「声の原則」を基盤に、声の出し方を変えることで誰でも瞬時に「伝わる話し方」を実現する「スミヤメソッド」を確立。「自分本来の声」を最大限に引き出し、声の力で多くの人の課題解決に貢献。人生を好転させるサポートをしている。即効性が特徴で、「同じ話をしても印象が変わる」「滑舌が劇的に改善」「話し方に説得力がついた」と評判を呼び、口コミだけで2,000人以上が受講。また、カナダ・トロント大学と専修大学で実践的講義を行う。企業のコミュニケーション顧問やセミナー講師も務める。国内外のCEO、要人、アナウンサー、ナレーター、会社員、学生など幅広い受講者の声を変えてきた実績がある。
