文/印南敦史

写真はイメージです。

長きにわたった新型コロナ感染症の流行は、結果として私たちの「免疫」に対する意識を高めることにもなったのではないだろうか。

新型コロナウイルスから身を守るためには、免疫力を高めることが重要なのだと、誰もが痛感することになったのだから。

とはいえ免疫のことを詳しく、正確に理解しているわけではなく、「“なんとなく、わかったようでわからない”という状態のまま」だという方のほうが多そうでもある(かくいう私もそのひとりである)。

意外と知る機会は少ないのだから、当然といえば当然ではあるだろう。

それはともかく、医師である『免疫力の新常識』(御川安仁 著、フォレスト出版)の著者は、医療の現場で幾度となく「免疫」の重要性を思い知らされてきたのだという。

はっきり言えるのは、現代人は免疫力が低下しているということ。そんな現代人にとって、「免疫を高めるのが良い」と言われますが、まずは「普通の免疫状態」でいること、これが大切です。(本書「はじめに」より)

もちろん免疫力を高めることも大切だが、それ以前に“普通”でいることが重要なのだ。さらにいえば、きちんとした知識を身につけておくことも忘れるべきではないだろう。

そこで、ここでは本書を参考にしながら、「免疫」についての基礎をあらためて確認してみたい。

まずは、「免疫」とはなにかということからだ。

いうまでもなく「免疫」という漢字は、「疫を逃れる」という意味である。「疫」は流行病(伝染して流行する病気)を指し、「逃れる」は、好ましくないことを避けて関わらないようにすることを表している。

いわば、流行する病にかからないようにする「システム」を免疫というのである。だが現代医療ではもう少し幅を広げ、「自分の細胞」と「それ以外のもの(遺物)」、すなわち自己と非自己を区別し排除、そして正常細胞を守る能力・システムのことを指すようだ。

ここでいう自分の細胞以外の非自己には病原性細菌、ウイルスだけでなく、がん細胞や外来異物、老廃物、自分の細胞ではあるがダメージを受けてしまった細胞などが含まれます。このほかにも、免疫には炎症の制御や、最新の研究では体の組織の発生・再生を誘導することもわかってきています。(本書11ページより)

つまり免疫システムがうまく機能していれば、そう簡単に感染症にかかったりしないということ。それは病気にならない、もしくはかかっても自分で治せるということをも意味するのだ。そう考えれば、なにかとわかりにくくもある免疫システムがいかに大切であるかが理解できるに違いない。

だが、しばしば話題に上る「免疫を上げる」とはどういうことなのだろう?

免疫は、菌や異物に対して「攻撃する」イメージがありますが、攻撃だけではなく、粘膜免疫で「防御」をしたり、攻撃しすぎないように攻撃を「制御」したり、システムとして動いています。(本書21ページより)

この免疫の「攻撃」作用や「防御」作用をしっかり維持しつつ、それらがうまく「制御」されている状態が免疫の理想的状態(普通の免疫状態)であるということである。そして本書では、この状態が崩れることを「免疫力の低下(免疫が下がる、落ちる)」と定義している。

すなわち、免疫低下とは「防御」「攻撃」「制御」のいずれか、もしくは複数が異常な場合(バランスを崩している場合)を指します。(本書23ページより)

そして「免疫を上げる」「免疫アップ」についての答えは2つあるのだという。まずは、免疫が低下した状態から、免疫がバランスがとれている理想状態に変えること(普通の状態に戻すこと)。

もうひとつは、「防御」「攻撃」「制御」のバランスがとれた理想的な免疫力を持った状態にある人が、それら3つのバランスは保ったまま、それぞれのパワーを上げていくこと。

だとすれば気になるのは、どうやって免疫力を上げるのかという点だ。

まず第一に「免疫を落とさないこと!」です。そのためには、ホメオスタシス(筆者注:体温や体の機能を一定に保とうとする働き)を乱すようなことをしないことが大切。生活リズム(サーカディアンリズム)を守り、良い睡眠を取り、良いものを食べて悪いものを食べない、充分休息をし、ストレスを溜めない、適度な運動をする、などを実践することです。(本書23〜24ページより)

とはいえ現実問題として、現代人は「免疫がすでに落ちている」人が多いとも著者は指摘している。だからこそ、当たり前のことをきちんと続ける――適切な生活習慣をきちんと維持することに尽きるのだろう。

『免疫力の新常識』
御川安仁 著
2090円
フォレスト出版

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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