「長寿保険」という保険がありますが、ご存知ではない人の方が多いのではないかと思われます。「人生100年時代」と呼ばれるように、長生きの時代となっている今、長生きならではのリスクや不安を抱えている人も多いのではないでしょうか? 今回は「長寿保険」について詳しくみていきましょう。
100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来がわかりやすく解説します。
目次
長寿保険とは?
長寿保険の基本概念
長寿保険の特長
長寿保険を活用した老後の生活設計
最後に
長寿保険とは?
長寿保険と聞いても、どのようなものなのかご存じの人は少ないかもしれません。まずは、長寿保険とはどのようなものなのか、簡単に解説いたします。
長寿保険とは何か
長寿保険について馴染みが薄いのは、日本で商品化されてからまだ10年程度と短いからです。長寿保険とは、年金受取開始から生きている限り、ずっと年金を受け取れる終身年金保険で、長生きすればするほど、多くの年金を受け取ることができる保険です。
このことから、長寿保険は「長寿年金」や「トンチン保険」「トンチン年金」などとも呼ばれています。「トンチン」とは、17世紀のイタリアの銀行家であるロレンツォ・トンティの名前に由来しており、トンティが考案した年金制度の仕組みをベースにしているため、長寿保険のことをトンチン保険やトンチン年金と呼ぶのです。
出資者が亡くなった場合に、その人が持っていた「年金を受け取る権利」が、生存している他の出資者に移るという制度を基本としており、死亡者の持分が生存者に移ることにより、生存者により多くの給付が与えられる仕組みの商品のことをトンチン性のある商品といいます。
なぜ長寿保険が注目されているのか
長寿保険が注目される要因は、「人生100年時代」といわれる「超高齢化社会」です。平均寿命が延び、長生きすることが当たり前のようになってきている今、長生きすることでのリスクも注目されています。一般的に、リタイア後の生活において、収入は「公的年金」が主となります。公的年金だけでは賄いきれない分を、自分の資産から取り崩して補填していきますが、長生きすればするほど資産が枯渇してしまうリスクが高くなります。
2019年に話題になった、「老後2,000万円不足する」という金融庁のワーキンググループの報告は、まさに長生きリスクの象徴であるといえます。不足分を補うためには自助努力が不可欠で、長寿保険は、このような長生きリスクをカバーするための選択肢の一つと考えられます。
長寿保険の基本概念
長寿保険の基本的な仕組みについて、把握しておきましょう。
定義と基本的な仕組み
長寿保険は、「低解約返戻金型の終身年金保険」です。保険料払込期間中は、解約返戻金が元本(支払った保険料)よりも小さいだけでなく、保険料払込期間中に被保険者が亡くなった場合の死亡給付金も元本より小さくなります。
解約返戻金を低く設定することで、トンチン性を高めていますが、アメリカでは解約返戻金をゼロとしている商品もあり、それに比べるとトンチン性は低いものとなっています。
一方で、終身年金として受け取るため、長生きすればするほど受け取る年金総額は大きくなり、ある時点から元本を上回ることになります。
他の年金保険との違い
年金保険には、他にも確定年金や有期年金と呼ばれるものがあります。確定年金や有期年金は、契約時にあらかじめ定めた10年や20年といった一定期間に、年金を受け取るタイプの年金保険で、生きている間に受け取る年金総額が決まっています。
これに対して、長寿保険は生涯に受け取る年金総額は、死亡する時期によって異なります。また、同じ終身年金タイプであっても、解約返戻金が元本とほぼ同じタイプのものに比べ、保険料が低く設定されています。そのため、元本に対しての受け取る年金総額の割合は、相対的に高くなることが特徴です。
長寿保険の特長
長寿保険のメリットとデメリットについて整理しておきましょう。
メリット
長寿保険のメリットは、主に以下の三つです。
長生きすれば得になる
長寿保険の最大のメリットは、長生きするほど多くの年金が受け取れる点です。前述のとおり、解約返戻金を低く設定することで保険料も低く設定されるため、元本に対しての受け取る年金総額の割合が高くなることがメリットとなります。
加入しやすい
長寿保険は健康状態の告知が不要なものもあり、持病がある人や過去に病歴を持つ人でも加入しやすい点もメリットの一つです。
所得控除
所定の条件を満たせば、生命保険(死亡保険)や医療保険とは別枠の個人年金保険料控除の対象となり、所得税や住民税の負担を軽減できます。
デメリット
長寿保険のデメリットは、主に以下の二つです。
元本割れの可能性がある
元本と受け取る年金総額が同じになる時期を「損益分岐点」といいますが、損益分岐点よりも前に死亡すると元本割れとなります。商品にもよりますが、損益分岐点は平均寿命より長く設定されているので、かなり高齢になってからというケースが考えられます。加入する際には、損益分岐点を考慮に入れることが必要です。
インフレリスク
将来年金を受け取る時に加入時よりもインフレが進んでいる場合、受け取る年金の貨幣価値は加入時よりも下がっていることになりますので注意が必要です。
長寿保険を活用した老後の生活設計
長寿保険は、長生きリスクに対応した保険です。老後の生活設計をする際に、長寿保険の活用は公的年金では足りない資金を補うための選択肢の一つとなり得ます。しかしながら、足りない資金を補うための選択肢は、積立てや資産運用など様々です。
老後の生活設計を確実にするためには、自分のライフプランを作って不足分がどの程度なのかを明確にすること、不足分を補填するためにどのような対策を選択するのかが重要となってきます。自分でライフプランを作ることが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめいたします。
最後に
「長寿保険」は、日本国内ではまだまだ馴染みの薄い保険ではありますが、超高齢者社会を生きる私達にとって、今後需要が高まるかもしれません。メリットとデメリットを十分に理解した上で加入することをおすすめいたします。
さまざまな金融商品が出回っている世の中だけに、あなたの味方になって守ってくれる相談相手を持つことが必要な時代になっています。
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
問い合わせ先:03-6403-5390(株式会社SMILELIFE project)
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