文/鈴木拓也

画像はイメージです。

大概の人は、年を重ねていくと身体各部に凝りや痛みを感じるようになる。

それで、湿布や痛み止めの薬を試し、整形外科にも通ってみるが、なかなか改善しない。そのうち、「年だから」と諦めてしまう人は少なくないだろう。

そもそも、なぜ凝り・痛みが生じるのだろうか。

原因の多くは、「身体のねじれ・歪み」であると指摘するのは、鍼灸師・整体治療家の矢上裕さんだ。矢上さんによれば、人は、長年の生活習慣によって身体の一部がねじれたり、歪んだりしていく。やがてそれが、凝りや痛みとして現れるのだという。

矢上さんは、そうした不調を自力で改善する「自力整体」を1989年に発案。改良を重ねながら、誰でもできて効果の高いセルフケアとして世に広めようと尽力している。これまで刊行した著書は25冊をかぞえ、現在でも1万人を超える人が自力整体の教室で学んでいる。今年5月には26冊目の著書『100歳でも痛くない 痛みが消える 自力整体』(新星出版社 https://www.shin-sei.co.jp/np/isbn/978-4-405-08233-5/)を上梓。初心者にもわかりやすい丁寧な解説で、好評発売中だ。

今回は、「自力整体をはじめて知った」という方に、その一部を紹介しよう。

基本は、ほぐして、左右対称にして、鍛える

自力整体は、緊張している身体をほぐして脱力体にする、左右対称体(整体)にする、整体を維持する鍛錬の3パートからなる。

各パートでは、ストレッチに似た一連の動作(実技と呼ぶ)をする。全部行うとトータルで約1時間半かかるが、週1回のペースでOKとのこと。

最初のほぐす実技の一例を挙げると、「骨盤ほぐし」がある。これは、骨盤と肋骨との間を開き、その周辺の筋肉をほぐすというもので、以下のように行う。

骨盤ほぐしのやり方(本書135pより)

次の整体のパートでは、長いタオルを用いて骨盤の歪みを整えるなどし、最後は鍛えてしめくくる。鍛えると言っても、筋トレのようなものではなく、自重によるソフトな動きの繰り返しとなる。例えば、「X脚治し・股関節の強化」は、以下の要領で行う。

X脚治し・股関節の強化のやり方(本書160pより)

これは、ひざの痛みを解消するとともに、股関節をほぐし、歩行時に転びにくくなるという効果がある。

実技の中には、やや複雑なものもあるが、本書の写真付き解説にくわえてQRコードから動画にアクセスでき、習得しやすくなっている。

個別の辛い症状に対応した実技も

本書は、腰痛や脊柱管狭窄症といった、特定の症状に対応した実技にも1章割いている。実技の多くは、上で紹介したフルのパートの自力整体の一部を切り取ったものとなる。

時間もかからないので、現になんらかのトラブルで悩んでいれば、これから始めてみるといいだろう。例えば、肩・首の凝りや痛みだと全部で5つの実技からなり、最初の2つ「四つんばい背中ひろげ」「正座前屈」は次のとおり。

肩・首の凝りや痛みを改善する実技(一部)(本書95pより)

「効果は絶大」な1日18時間の断食

自力整体の特色の1つが、食事法を取り入れていることだ。

矢上さんは、実技だけでは不調が治り切らない、あるいは再発する人がいることに注目。そこで、断食を試みてもらったところ、目覚ましい効果を見た。矢上さん自身も、かつては腰痛持ちであったのが、断食で痛みが解消したという。これについては、次のような説明をしている。

断食をすると、身体の中にある老廃物が排泄されます。何日か断食を続けていると、大腸の奥に溜まっている滞留便が出ます。すると、一気に痛みがとれるのです。
断食によって内臓を休息させると、内臓が元気になり、経絡の流れが良くなります。とくに排便と関係の深い、大腸経の経絡が回復し、排泄につながったということです。(本書48pより)

滞留便は、腸腰筋という筋肉を圧迫し、結果として腰や骨盤がねじれたり歪んだりすることにより発生する。そこから派生して、ほかの部位の凝り・痛みが生じることがあるという。言い換えると、滞留便を出すことによって、凝り・痛みの改善につながる。矢上さんによれば、その最良の方法が断食だという。

断食といっても、何日間も食事を抜くというハードなものではない。矢上さんは、1日18時間の断食だけでも「効果は絶大」と説く。具体的に言うと、朝食を抜いて、昼食と(昼食から6時間後の)夕食だけの食生活とし、空腹の状態で就寝する。これによって大腸の排泄が活発になり、滞留便を出し切れる。また、昼食に炭水化物を、夜にたんぱく質を主に食べる。炭水化物とたんぱく質では、分泌される消化酵素は異なる。別々に食べることで、消化酵素を減らせ、消化器官や肝臓などの疲労を防げるという。

* * *

自分で自分に整体を施す自力整体は、自宅で行えて、お金もかからないという大きなメリットがある。習慣化のハードルはちょっとあるかもしれないが、効果を思えば、試してみる価値はあるだろう。興味を持たれたら一読し、実践されたい。

本書内写真:齋藤久夫(有限会社ケイフォトサービス)

【今日の健康に良い1冊】
『100歳でも痛くない 痛みが消える 自力整体』

矢上裕著
定価1650円
新星出版社

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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