マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、無意識の思い込み「アンコンシャスバイアス」を取り上げます。
「アンコンシャスバイアス」とは?
「アンコンシャスバイアス」という言葉をご存知でしょうか? 日本語では「無意識の思い込み」や「無意識の偏ったものの見方」などと呼ばれており、誰しもが持っているものです。2010年代中頃から耳にすることが増えたかと思います。
過去の経験や見聞きしたことに基づいて、無意識のうちにあらゆるものを自分なりに思い込んだり、決め付けたり、歪んで解釈する「アンコンシャスバイアス」は、企業や個人の生産性にも影響を与えます。
今回は、アンコンシャスバイアスの理解と共に、必要な行動や考え方を識学の観点からお伝えできればと思います。
アンコンシャスバイアスの例
相手の過去の経験や立場、年齢、性別などを理解せずに自分自身の思い込みで発言をしてしまう例をご紹介します。
・定時で帰宅する若手は仕事に対するやる気が低いと思う
・高卒は大卒と同じ仕事は出来ないと思う
・体育会系出身だから根性があると思う
・自分にも出来たから相手も当然できると思う
・男性は女性に比べて仕事が優先であるため積極的に残業すべきだと思う
・出張や単身赴任は独身が優先だと思う
こういった発言は時としてハラスメントにも繋がり、生産性の低下をもたらす可能性があります。1つ目に挙げた「定時で帰宅する若手」は果たして仕事に対するやる気は低いのでしょうか? そうとも言えません。業務時間内に求められた役割を成し遂げて帰宅している可能性もあります。周りと比べると逆に生産性は高いと言えます。だらだらと残業をして仕事の質を時間でカバーしている人よりも、成長が見込める若手なのかもしれません。
このような場面で「昔はこうだった……」「自分の時代は〇〇だ……」などの無意識の思い込みで発言をしてしまっては、「残業をすることが正しいこと」と間違った解釈に繋がるどころか、頑張って残業をする姿を社長や上司にアピールする社員も増えかねません。
識学ではこの「無意識の思い込み」を「誤解や錯覚」という言葉で表現をしています。意味合いは同じで、社長の思い込み、上司の思い込み、部下の思い込みによって、組織の生産性を下げる原因へと繋がります。
上司と部下との間でありがちな錯覚
上司と部下とのミーティングをイメージしてみましょう。上司が「何度も伝えたのだから伝わっているだろう」や、「これだけ詳しく説明をしたのだからきっと大丈夫だろう」と、無意識の思い込みをしていることはありませんか? これは、まさに上司と部下との間で「錯覚」が起きている状態と言えます。
上司は自分の過去の経験や知識から何をすべきか分かっていたとしても、それが部下に伝わっているとは限りません。
この場合、解決方法としては至ってシンプルです。「部下本人の口から言わせること」です。何が伝わったのか? 次の会議までに何を準備すべきなのか? を相手(部下)の口から言わせることで、自分(上司)の認識と合致しているかをその場でチェックできます。
アンコンシャスバイアスへの対策
アンコンシャスバイアスをなくすには、まずは「そもそも自分と相手とは違う」と認識することです。会社において社長と従業員、上司と部下では立場が違いますし、そもそも一般社員同士でも「当たり前の基準」が違うものです。
「普通は……」「一般的には……」「〇〇は当たり前だ……」といった言葉を自然と使ってしまっている時点で、アンコンシャスバイアスが発生している状態と言えます。
次にすべきは、「相手と認識を合わせること」です。無意識の思い込みによって起きる双方の誤解を解くためには、共通の認識を持つための決め事、いわゆる「ルール(基準)」を決めることです。
ルールを決めるにあたり双方がどう思っているかのコミュニケーションは必要です。仮に自分と異なる意見が出たとしても、相手の意見や価値観を否定せずに「なぜそう思ったのか?」と背景を知る必要があります。
ルールを決める際の注意点
相手と認識を合わせるにあたり、ルールを決めて共通認識を持つことが重要ではありますが、「最終的に誰がルールを決めて良いか」を理解しておくことも必要です。答えは責任を取る立場の人がルールを決める権利を持っています。例えば、会社全体のルールであれば社長、部門のルールであれば部長となります。
上司・部下のような上下関係のないコミュニティにおいては「誰がルールを決めるべき人なのか」を定めておく必要があります。例えば、社会人のスポーツサークルのようなコミュニティの場合、そのコミュニティを運営するにあたって、責任者がルールを決めなければ活動に支障をきたします。責任者はルールを決める権利を有する一方、そのルールによってコミュニティメンバーが辞めてしまったり、問題が発生したりした際には責任を取る立場となります。
まとめ
アンコンシャスバイアスは誰にでも存在するものです。そもそも発生するものだとの認識のもと、相手がどう認識しているかを確認する作業や、相手の価値観や反対意見に対する背景を知ることが必要です。個々人の価値観は大事であるという前提を持ちながら、責任者は物事を決めるという決断を下し組織やチームを率いてください。
最後に誤解のないようにお伝えしますが、「従業員一人一人の価値観に会社や上司が合わせてください」ということではありません。会社においては「組織が一体となって戦う」必要があり、そのためには会社のルールに個人が合わせなければいけません。全員が納得していなくても行動させる場面が必要な時もあります。
今回お伝えしたかったことは、「無意識の思い込み」による不必要な相手との摩擦を生まないようにすること、そして、ハラスメントや生産性の低下を防ぐために、アンコンシャスバイアスについて正しい理解を持つということです。
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