マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、「働かないおじさん」問題をを取り上げます。
株式会社識学では、2022年4月27日(水)~28日(木)にて「“働かないおじさん”に関する調査」を行いました。その結果、49.2%の企業で “働かないおじさん”がいると感じていることが判明しました。また、30.3%が「自分も将来働かない社員になるかもしれない」と回答しました。(レポート内容)
本記事では自分自身が「働かないおじさん」と認定されないために身に着けておきたいスキルを解説します。
働かないおじさんが発生する構造的な理由
多くの会社組織の構造はピラミッド構造を成しています。例えば、一般社員→主任→係長→課長→次長→部長と役職が設定されている会社の場合、年次が考慮される場合もあるにせよ、それぞれの役職で成果を出した社員がより上の役職に就任していく人事制度が一般的でしょう。しかし、主任に昇格したからといって、必ずしも係長になれるとは限りません。必要とされるスキルはそのポジションによって変わるからです。成果を出せなければ、主任という役職に滞留するという現象が起きます。
この現象がそれぞれの役職で発生してしまうと、成果の出せない役職者ばかりの組織になってしまいます。若手社員の「うちの管理職は無能だから」というぼやきは、ある一面では組織の構造的側面から論理的整合性があるとも言えます。
では、「成果の出せない管理職」≒「働かないおじさん」はなぜ生まれてしまうのでしょうか。それは、役職に紐づく役割を認識できないという、社員と会社の認識のズレから始まります。
必要なスキル1「受け入れ力」
「自分が営業の時は成績優秀だったんだぞ。何度も表彰もされたし、今の大口取引先のあの企業だって自分が主任の時に開拓したんだ。今でも営業力は君たちに負けないぞ!」なんて飲み会で部下に武勇伝を語っているおじさん。でも今はなかなか出世もできず、ずっと主任どまり。こんな人はいませんか。
いわゆる働かないおじさん予備軍に該当しますが、こうした方は今の役職で会社から求められている役割を正しく認識できていない可能性が高いです。ゆえにその役割が果たせず出世もままならないのでしょう。
求められる成果も報酬も、会社の成長に比例して右肩上がりになるのが世の常です。このため、同じパフォーマンスを継続しているだけでは、評価は相対的に低下していきます。ましてや役職が上がれば、求められる役割そのものがプレイングからマネジメントへと変わっていきます。
自分への低い他者評価を受け入れることは辛いことかもしれません。しかし、受け入れないことには「働かないおじさん」からの脱却、すなわち周囲の評価を覆す事は叶いません。
他者評価を受け入れ、会社は今どういう状況でどこに向かっているのかという会社環境を正しく認識し、上位者が今自分に求めている役割とは何なのかを正しく把握し、それを受け入れることです。「正しく」とは「事実で」と同義です。自身の憶測や見解、希望的観測、自己評価はいったん脇に置きましょう。
必要なスキル2「踏み出し力」
「働かないおじさん」にならないための2つ目の重要なスキル。それは「踏み出し力」です。
自身に求められている期待役割を正しく認識した後は、現在の自分との差分を図り、その不足分を埋めることが「働かないおじさん」への道からの回避行動となります。差分を図るのには自分自身だけでは難しいので、上司や周囲の力を借りましょう。
具体的には「この役割を果たすために自分に足りていないのは何かフィードバックをください」と上申、依頼することです。
しかし、ここでも感情や自己評価が邪魔をします。「頭ではわかっているけど納得できない」「なんで自分がそんなこと言われなきゃいけないんだ」「今更新しいことを学んだり、取り組むなんて自信ないよ」といった心の声です。人は他人の説明や説得、知識として取り入れた情報だけでは考え方、思考は変化しないものです。
「とりあえずやってみるか」と一歩踏み出し行動に移すことです。実施にやってみて、もう一度上司や周囲からフィードバックをもらうことが大切です。なぜなら、いくら自分自身が「働かないおじさん」認定から回避しようと思っていても、実際の行動に移さないと、上司や周囲はその変化を認識できません。
また、実際に行動に移してみて、上司や周囲からフィードバックをもらってはじめて「あ、上司が言っていたのはこういうことか」だったり、「あ、自分はこういうこともやればできるんだ」「やっぱりこれは自分には出来そうもないから、これは他部署に依頼しよう。これは部下に指示しよう」と考え方、思考を変化させることができます。
必要なスキル3「仕組み化力」
「働かないおじさん」にならないための3つ目の重要なスキル。それは「仕組み化力」です。
先に挙げた識学のレポートは、全国の従業員数300名以上の企業に勤める20歳~39歳の男女に聞いたアンケートを基にしています。「働かないおじさんが会社でしていることランキング」では、
1位「タバコ、お菓子などの休憩が多い」
2位「ボーっとしている」
3位「無駄話をしている」
4位「ひたすらネットサーフィンをしている」
5位「寝ている」
という調査結果になりました。
文字通りに露骨にサボっている様子を社内に晒していたら問題ですが、これは若手社員とおじさん社員間の誤解や認識のズレもあるでしょう。特に3位と4位は業務上必要な情報収集を行っているというおじさん側の言い分もありそうです。
それでも、上記のような行動で「働かないおじさん」認定されてしまわないようにおすすめするのは「ルールの明示」です。例えば「あの人、タバコばっかり行ってる」の「ばっかり」は個人の主観もはいってしまうので、「喫煙は昼休憩の間のみとする」や「全員30分間は休憩時間とは別に自由に気分転換の時間を設けてよい」というルールを会社や部署内で設定することです。
また、先述の「受け入れ力」も「踏み出し力」も継続が大切です。楽な方に流れて行ってしまうのが人の常なので、そうならないように仕組みの力を利用することをおすすめします。仕組みの力とは「定例的に役割の確認、不足の認識、行動のフィードバックを行うことを上司と約束する」などです。ここでも上司や周囲の力を借りて仕組み化しましょう。
幸せな「働くおじさん」になろう
40代50代日本人男性の幸福度が低いという統計データがあります。この幸福度はどのように高まるかというと、ウェルビーイング促進行動目録によれば、「対人援助行動」「課題遂行行動」「自己決定行動」「挑戦行動」と記載があります。
まさに、「働かないおじさん」認定からの回避行動に類するものがあるのではないでしょうか。人は他者からの評価を得ることで存在意義を感じます。幸せな「働くおじさん」になることでより充実した人生にしていきましょう。
参考:国立研究開発法人科学技術振興機構 ウェルビーイング促進行動目録の開発 https://researchmap.jp/iwanolab/misc/22791314
識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/