腰痛の改善や予防にはウォーキングが有効と知られていますが、それを裏付ける新たな研究結果が発表されましたのでご紹介します。
日本では、腰痛に悩む人が人口の10%程度いると言われています。
また腰痛になったことがある成人の7割は1年以内に再発を経験するとも言われています。
最新の研究によると、定期的なウォーキングを続けるだけで、腰痛が再発するまでの期間を大幅に遅らせることができるとわかってきました。
ウォーキングが腰痛の再発を防いでくれるという研究結果
オーストラリアのマッコーリー大学で腰痛を専門に扱う研究チームによると、定期的にウォーキングするだけで、何もしない場合と比べて再発までの期間が2倍ほどに延びるそうです。
「ウォーキングはお金をかけずに誰でも簡単にできる運動です。場所も選ばないので、どこに住んでいても気軽に始められます」と、マッコーリー大学で理学療法を教えるマーク・ハンコック教授は語ります。
研究者たちは今回、慢性的な腰痛から回復したばかりの701名の成人を対象とした臨床試験を実施しました。
被験者たちは、専門家が指導する理学療法プログラムに参加するグループと、何もしないグループにランダムに割り振られました。
前者は個別に用意されたメニューでウォーキングを続けたほか、理学療法士による講習会を毎月1回、半年にわたって受講しました。
被験者がどのくらいウォーキングしたかは、本人の年齢や体重、既往歴などを考慮して理学療法士が提案したため一様ではありませんが、6か月目までに最低でも週5回30分間歩くようにするといった内容でした。
また、実際にどのくらい歩いたかを記録する歩数計や日記帳も支給されました。
一方、もう片方の対照群には特段の介入が行われませんでしたが、思い思いの方法で生活に腰痛予防を採り入れたり、一般的な腰痛治療を受けたりすることはできました。
1年から3年の追跡調査の結果、ウォーキングプログラムに参加した前者のグループは、何もしなかった後者のグループよりも、日常生活に支障をきたすような痛みを経験した回数が少なく、また、腰痛が再発するまでの平均期間もはるかに長かったそうです。
何もしなかったグループの被験者は、平均して112日後に再び腰痛を患いました。
これに対して講習会を受けながらウォーキングを続けたグループの被験者は、平均で208日間は腰痛を経験しなかったということです。
腰痛再発までの期間が約2倍です! 腰痛再発のリスクが半減したとも言えます。
ウォーキングが効果的な理由
ウォーキングが腰痛の予防に効果的である正確な理由は解明されていませんが、
☆背骨や筋肉に適度な負荷をかける緩やかな運動
☆それがもたらすリラックス効果によるストレスの軽減
☆「幸せホルモン」として知られる神経伝達物質のエンドルフィンの分泌
などが相互に作用した結果ではないかと、マーク・ハンコック教授は考えています。
さらに、ウォーキングは腰痛の予防だけでなく、心肺機能や骨密度、体重、メンタルヘルスを健康的に維持する上でも大きな効果を期待できます。
今回の臨床試験で実施されたプログラムの参加者は、腰痛の再発を遅らせることができただけでなく、仕事を休んだり通院したりする回数も減って、生活の質そのものが向上したそうです。
「これまで腰痛対策に効果的とされてきた対症療法は、専門家による経過観察や高価な医療器具が必要とされることが多く、慢性的な腰痛に苦しむ大半の患者にとって現実的な選択肢とは言えませんでした」と、研究チームのメンバーであるナターシャ・ポコヴィ博士は付け加えています。
それゆえ、はるかに安上がりで場所を選ばず、誰でも気軽に続けられるウォーキングの効果を実証した今回の研究結果は、多くの腰痛患者に希望をもたらしたと言えそうです。
Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial – The Lancet(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(24)00755-4/fulltext)より
ヨガ・太極拳・気功などにも同様の効果あり
ウォーキングだけでなく、人気の高いヨガ、太極拳、気功などの身体活動も、腰痛対策の効果があることが、米国のフロリダ アトランティック大学の研究で明らかになっています。
「腰痛は痛みだけでなく、うつ病や不安などのメンタルヘルス不調、睡眠障害、さらには社会的孤立とも関連しており深刻です」と、同大学社会デザイン研究学部のジュヨン・パーク教授は言っています。
「腰痛を治療するために、運動や心身活動が勧められることが多いのですが、ヨガ、太極拳、気功なども慢性的な腰痛に対して効果があることが示されました」としています。
研究グループは、慢性的な腰痛、心理的要因、生活の質の低下に対する、運動ベースの心身介入の効果を検証した32件の研究を解析しました。対象となったのは、33~73歳の成人3,484人でした。
調査した研究のうち2件は、米国の軍人や退役軍人が直面する健康問題を対処する心身へのアプローチを検討したもので、とくにヨガやストレッチはストレス対策にもなり、腰痛に対して効果があることが示されました。
「腰痛の治療として、痛みと炎症をやわらげるために、医療機関で薬物療法も行われています。ヨガ、太極拳、気功は、そうした投薬治療や神経ブロック療法などの代替として活用できる可能性があります」と、パーク氏は指摘しています。
Oh My Aching Back: Do Yoga, Tai Chi Or Qigong Help? (フロリダ アトランティック大学 2020年2月6日)(https://www.fau.edu/newsdesk/articles/chronic-back-pain.php)より
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文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
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