正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先生やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中⾝については十分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第163回は、「俄雨」をご紹介します。天気予報などでよく耳にしますが、漢字で書かれると一気に読むのが難しくなりますね。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「俄雨」とは何とよむ?
「俄雨」の読み方をご存知でしょうか? 「われあめ」ではなく……
正解は……
「にわかあめ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「急に降りだしてまもなくやんでしまう雨」と説明されています。一様に長く降り続ける雨を「地雨(じあめ)」と呼びますが、「俄雨」はその反対です。小雨ではなく比較的大粒の激しい雨のことを指し、類義語として「村雨」や「驟雨(しゅうう)」が挙げられます。
また、俄雨を生じさせる雲は積乱雲(入道雲)です。積乱雲といえば、夏空に広がる大きな雲をイメージしますね。そのため、「俄雨」は夏の季語として、俳句や短歌などで使われることもあるのです。
「俄雨」の漢字の由来は?
「俄雨」に使われている「俄」には、「突然・急に」という意味が含まれています。また、江戸時代末期から明治時代初期に流行した劇の一つに、「俄狂言」があります。これは、素人が即興で披露する寸劇のことで、祭りの際に路上などで演じられることが多かったそうです。
一説では、この「俄狂言」が由来となり、「一時的である」「物事が急に起こる」という意味として「俄」が使われるようになったとされています。最近では、それまで興味がなかったにも関わらず、周囲の盛り上がりに便乗して急にファンを公言する人のことを「にわかファン」と表現することもあるそうです。
様々な雨の名称
突然降る激しい雨のことを指す「俄雨」。雨には、降水量や季節によって、様々な名称がつけられています。例えば、夏の夕立は大粒の雨による水しぶきで、あたりが白く見えますね。そのため、夕立は「白雨(はくう)」と呼ばれることがあるのです。
また、梅雨のように降り続く秋の長雨のことを「秋入梅・秋黴雨(あきついり)」と呼びます。「ついり」という読み方は、「梅雨入り」の読みが転じたものと考えられています。ほかにも、上空に雲が見られないのに雨や雪が降ることを「天泣(てんきゅう)」、局地的に降る雨のことを「外持雨(ほまちあめ)」と呼ぶそうです。
「天泣」は、まるで天が泣いているように見えることが名称の由来です。また、「外持雨」の「外持」は当て字で、内密で貯えた財産という意味の「ほまち」が由来となって生まれた表現であるとされます。
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いかがでしたか? 今回の「俄雨」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 夏の夕立のように突然降る「俄雨」。雨には様々な表現があることが分かりました。俳句の季語として使われているものも多く、自然を大切にする日本人の風流心が表れているようです。
雨の名称はほかにもたくさんありますので、ぜひ調べてみてくださいね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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