文/鈴木拓也
ねこ背を甘くみてはいけない
おもに高齢者がかかりやすい、脊柱管狭窄症や腰椎すべり症。
腰や脚の痛みが続く厄介な病気として知られている。
この病気の患者さんを、のべ10万人改善してきたのは、西住之江整体院(大阪市)の白井天道院長だ。
白井院長によると、こうした病気で来院する人たちのほとんどが、「ねこ背」であるという。著書『寝ながら1分! ねこ背がスーッと伸びる本』(SBクリエイティブ)で、白井院長は次の説明を加えている。
ねこ背が原因で脊柱管狭窄症やすべり症になった人、脊柱管狭窄症やすべり症が原因でねこ背になった人、とにかく“もれなく”と言ってもいいくらい、患者さんたちはねこ背を併発していました。
ねこ背の人は脊柱管狭窄症やすべり症の予備軍といえるかもしれません。(本書3pより)
このねこ背、頭痛や胃腸の不調などとも関係があるそう。白井院長は「甘くみたり、放っておいたりしてはいけません」と忠告する。
また、ねこ背には3つのタイプがあるという。それは、「首ねこ背」「背中ねこ背」「腰ねこ背」。首ねこ背は、いわゆるストレートネック。首がまっすぐ前に出て、首の付け根から曲がっているタイプを指す。そして、背中ねこ背は、背中が丸まっているタイプ。腰ねこ背は、腰から曲がったタイプで、高齢者に比較的多い。いずれも、悪姿勢などの生活習慣によってもたらされるそうだ。
本書の中で白井院長は、ねこ背のタイプに応じ、矯正する様々な方法を掲載している。
今回は、その方法の一部を紹介しよう。
「バンザイ」ストレッチで準備体操
まずは、ウォーミングアップ。ねこ背で固まった筋肉をほぐすやり方の1つが、このストレッチだ。これは、背中の僧帽筋下部に刺激を与え、ねこ背の改善に役立つ。
・椅子に座って背筋を伸ばす。
・肩幅よりも少し広めに腕を伸ばしてタオルを握る。
・「バンザイ!」するように両腕を上げる。
・両腕を床と水平の位置にまで下ろす。この腕を上げる・下ろす動作を10回繰り返す。
ハムストリングをほぐして腰ねこ背を改善
こちらは、高齢者に多い腰ねこ背の改善となるストレッチ。腰ねこ背の人は、太もも裏の筋肉であるハムストリングスが硬いという。ここが硬くなると骨盤が後傾(後ろに倒れる)し、腰椎の湾曲がなくなって、腰ねこ背となりやすい。そこでハムストリングをほぐし、腰を伸ばしやすくするストレッチを行う。
・あお向けに寝る。
・膝の後ろに両手を入れ、膝を伸ばせる範囲で伸ばす。軽く曲がっていてもOK。
・自分の胸のほうに、膝をグーッと引き寄せる。足首を曲げて、足の裏を天井方向にグッと向ける。
・太ももの裏が伸びたところで、そのまま20秒キープ。片方の足が終わったら、もう片方の足でも行う。
スマホは寝っ転がって見る
白井院長は、ねこ背の「諸悪の根源は姿勢にある」と繰り返し本書の中で述べている。そのため、いくらストレッチを頑張っても、日頃の姿勢が悪ければすぐねこ背に後戻り。そこで、ねこ背を防ぐ好ましい生活習慣についてもアドバイスがある。
その1つが、スマホを見る時の姿勢。長時間スマホの画面を眺めていると、いつの間にかうつむいてしまう。そこで、スマホは「寝っ転がって見ましょう」と白井院長は説く。また、スマホに限らず、家の中ではときどき「横になる時間」をもうけるようにとも。日中、ずっと座っていたり、立っているのは、背骨への負担が実は大きい。なので、「昼間からだらしない」とは考えず、意識して横になって姿勢改善につとめよう。
また、適切な寝具選びが重要だとも。その基準は「寝返りの打ちやすさ」。枕については、次の説明がある。
枕には、首とマットや敷布団との間にできる隙間(人によって異なりますがだいたい1~6cm)を埋め、首や肩への負担を減らすという役割があります。
この隙間に合わない高さの枕で寝ると、呼吸がしにくくなり、安眠できない原因のひとつになります。そこで、枕はこの隙間を埋める高さがあり、少し硬め。寝返りを打って、横を向いたときに首と背筋がまっすぐになり、鼻筋のラインが胸の真ん中にくる高さが、理想的とされています。(本書120~121pより)
また、マットレスについては低反発か高反発かは一概に言えないものの、脊柱管狭窄症やすべり症で痛みがあって、横向きでしか寝られない人には、低反発をすすめることがあるとも。
白井院長は、「治すは自分自身」という心がけを強調する。ねこ背が気になる方、脊柱管狭窄症やすべり症で悩んでいる方は、本書のセルフケアを実践してみてはいかがだろう。
本書内イラスト:福場さおり
【今日の健康に良い1冊】
『寝ながら1分! ねこ背がスーッと伸びる本』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った映像をYouTubeに掲載している。