長野県中野市で5月25日に発生した、立てこもり事件の全容が明るみになって来た。警察官を含む4人の命を奪った30代の男は、地元の名士の息子だった。両親が「息子のために」と尽力してきた経緯を伝える報道が目立つ。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは、「地方に住む親御さんから、息子……特に長男の素行調査の依頼は以前から多いです」と語る。今回の依頼者・信也さん(60歳)は、甲信越地方で江戸時代の初期から商店を営んでいる家に婿に入った。跡取りを作ることが最大のミッションで、やっとのことで授かった長男(27歳)が東京から家に帰ってこなくなってしまい、調査を依頼する。
【それまでの経緯は前編で】
多摩地方に住む息子の生活
依頼者・信也さんは、息子が犯罪行為をしていることを恐れていた。特殊詐欺や強盗など、若い人を狙って、不当な搾取を繰り返し、罪を押し付ける犯罪も連日報道されていました。
息子と直接会ってはいませんが、もしかすると家を継ぎたくないために、犯罪をしている可能性もあります。人間は「どうしてもやりたくない」ことのためなら何でもするようなところがある。それは、この調査を続けてきて何度も感じてきました。
信也さんから渡された多摩地方の住所は、家賃3万円台の古いアパートです。朝から張り込みを始めましたが、人の気配は全くない。ポストもチラシがあふれていました。
1日目、2日目と張り込みましたが、全く動きはありません。3日目の18時に息子が家に入っていくのを確認。3時間程度して、また出てきました。
息子は近くの繁華街のスナックに行き、夜の12時くらいまで過ごして、近くの一戸建てに帰宅。住んでいるのは60歳の女性で、1人暮らしのようでした。
その日は女性の家から出てこず、翌日はファストフード店へ。スマホを見つつ指を動かしているので、おそらくマッチングアプリを使っているのでしょう。2軒目のバーで、顔見知りらしい30代後半の女性と、ラブホテルに行きます。女性は夜中に出てきてファミリータイプのマンションに帰宅。息子は60代の女性の家に帰っていきました。
1週間の調査でわかったのは、息子は60代の女性の家に転がり込みつつ、別の女性と遊び歩いていること。息子は自分から積極的に話さず、相手の話をうんうんと聞いています。完全な受け身で、言われたことしかしないところに、大人が先回りして全ての世話をしていた息子の幼少期の環境が透けて見えていました。
【犯罪行為はしていないが……次のページに続きます】