「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努力をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶力の鍛錬につながると言われています。
「脳トレ漢字」第148回は、「杜撰」をご紹介します。ビジネスシーンでよく使われる「杜撰」。実は、中国の故事が由来となってできた、故事成語なのです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「杜撰」とは何とよむ?
「杜撰」の読み方をご存知でしょうか? 「とせん」と読んでしまいそうになりますが……
正解は……
「ずさん」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「詩や文章に、典拠の確かでないことを書くこと」、「物事がいいかげんで、誤りが多いこと」と説明されています。「杜撰な対応」や「杜撰な管理」など、物事や人に対する対応が雑であることを意味する言葉です。
ニュース番組や新聞で、「事件発生の原因は、杜撰な管理体制にあった」などのように使われていることが多いですね。「杜撰」は、その人の態度や言動がいい加減であるという意味を持つ言葉ですので、人の性格を表す言葉としては使いません。
そのため、「あの人は杜撰な人だ」などというように使うのは誤りです。
「杜撰」の漢字の由来は?
では、「杜撰」を構成する漢字を一文字ずつ見ていきましょう。「杜」は、宋代の詩人・杜黙(ともく)のことを指し、「撰」は詩歌や文章を作ることを指します。また、現在では「ずさん」と読みますが、かつては「ずざん」と読むこともあったそうです。
四字熟語にもなった「杜撰」の故事
何かと耳にすることが多い「杜撰」という言葉。この「杜撰」は、中国の故事に由来するということをご存知でしょうか?
宋の時代の詩人である杜黙は、定型詩の形式に合わない詩を多く作っていました。杜黙の詩を読んだ人々の多くは、いい加減で大雑把だと彼の詩を批判し、これが元となって「杜黙詩撰(ともくしさん)」という四字熟語ができたそうです。
そして、この四字熟語から、いい加減で雑であるという意味を持つ「杜撰」という言葉が生まれたのです。日本には、中国から伝来した仏教の宗派・禅宗を通じて伝わったとされ、鎌倉時代に成立した仏教書『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』に、「杜撰」の使用例が見られます。
***
いかがでしたか? 今回の「杜撰」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「杜撰」は、中国の故事によって作られた言葉ということがわかりました。周囲から「杜撰な対応をする人」と敬遠されないためにも、自分の言動には常に注意しておきたいものですね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB