文/鈴木拓也
筆者は、長年の頭痛持ちで肩こり持ち。
それをなんとかしようと、過去様々な整体院やマッサージサロンを訪れた。
しかし、あまり改善が見られず、「この症状と一生付き合っていくのかな」と、半ば諦めていた。
そんな折、ふと目にしたのが『究極の身体調整法 瞬間整体』(上原考一/BABジャパン)という1冊の書籍。
一読して、「ちょっと、あやしい本だな」「いや、もしかすると本物かも」という気持ちが相半ばするなか、たまたま上京する機会があった。そのついでにという感じで、長野県にある著者の整体院、ボディーバランス上原をたずねた。
特徴は「自由自在な施術スタイル」
上原考一院長は、筆者より1歳年上の55歳。ややたくましい体つき、気さくな話しぶりで好感がもてる。
院長自身、小学生の時分から約30年間も椎間板ヘルニアによる腰痛に苦しみ、あらゆる治療法を受けたが、望ましい結果を得られなかったという。
最後は覚悟の上、治療家の道を選び、身体の仕組みを学びながら、自分自身に応用し、完治させた。
これまで通った整体院と同様、簡単な問診が終わり次第、施療が始まるかと予想していたら違った。上原院長が編み出した「フリースタイル(FS)整体」についての施術方針など説明があり、過去の通院者のエピソード、身体論や脳科学に関する話が続く。
FS整体のコンセプトは、一言で言えば「柔軟な発想と自由自在な施術スタイルで最高改善を目指す」というもの。ごく短時間で体にかかる負担と刺激を最小限にし、自身に備わっている自然治癒力の可能性を最大限に引き出すという。
上原院長は次のように話す。
「誰しも、何か特定の“やり方”をどうしても追い求めてしまいます。だから、うちに来る人たちもみんなそうです。『本見ました。素晴らしいです』って、何かやり方を教えてもらえることを期待するのですね。終わってから、『本当にこれでいいんですか、本当にこれで大丈夫ですか』って言うから、『いやそこを疑っても時間とお金のムダですよ』と話します」
やり方ではなく“考え方を浸透させていく”。だからフリースタイル。型にはまらず、不調に悩んでいる当人にあった施療と、「答えは全部自分が知っている」という絶対感覚という考え方が真骨頂だ。
自然に身体が動き出す心地よさ
長い話に半信半疑でいる筆者だったが、本格的な施療が始まった。
まず、両手を挙げたり、片足立ちをしたりなど、簡単だが細かい動作をする。上原院長は、「こうしたバランス解析、動作検査をすることで、本人も気付かなかった身体のバランスが明確になり、改めて自分の状態を知ることとなります。そして、立位でちょこちょこっと施術して、もう一度検査すると、先ほどより動きやすくなるなど変化を実感できます」と説明する。
そうした動作の後、ベッドに寝かされる。
カイロプラクティックの骨の音が鳴るような施術や、グイグイ揉みほぐすものとは真逆の、足を曲げたり、首を横に向けたりなど極めてソフトな施術と動作解析が続く。全体的に、効果確認のための動きがあり、そのため変化改善がわかりやすく、20分くらいで施術は終了した。
この時感じたのは、体全体(特に背中側)がとても軽く「すがすがしい」ことだ。起き上がると、まるでフラダンスの練習でもするかのように自然に身体が動き出し、それがとても心地いい。
「なんでしょうね……なぜか軟体動物みたいに動いてしまうんです」と打ち明けると、院長は、「それは体が喜んでいるからです。それに、来院時とは全然違う笑顔になっていますね。来院された方はみな、とてもにこやかになって帰っていきます」と答えた。
正直に言えば、この時は頭痛や肩こりはまだ残っていた。それについては、「もう何回か通う必要があるでしょう」と院長は言う。さすがに、数十年の慢性疼痛を1回で治すのが厳しいのは納得できた。
それはそれとして、過去20人を超える治療家の施療を受けた中で、本当の「希望」を持てた、はじめての体験であった。
楽な呼吸で立ち・座りをする
筆者の体験談は、前置き程度にさらっと済ませるつもりであったが、つい長くなってしまった。本題に入ろう。FS整体の「エッセンス」は、茅野駅から数キロ離れた治療院をはるばる訪れなくとも体感できる。院長の著書『究極の身体調整法 瞬間整体』に、実践的なメソッドが掲載されている。その一部をこれから紹介したい。
1つめは、「椅子から立ちやすくする瞬間整体」。
まず、いつもどおりに今座っている椅子から立ち上がり、また座ってみよう。
この時、視線はどこを向いていただろうか?
おそらく下(床面)を向いていたと思うが、これが問題になる。これだと深い呼吸ができず、末端に酸素が行き渡らなくなる。院長によれば、これが酸欠状態をもたらし、肩こりや偏頭痛などの不調をもたらすという。
この点を踏まえ、息を吸いながらもう一度立ち上がってみよう。立ち上がる際は「視点を上に向けて、頭からひもで真上に引っ張られるような感じ」で。下を見ないと怖いという感覚が一瞬あるかもしれないが、やってみると息が詰まる感じもせず、ずっと快適であることがわかるはずだ。
座るときは、ほぼこの逆順になる。息を吐きながら、「足を開いて蹲踞(そんきょ)の姿勢をとり、お尻を突き出して、股関節や膝などのパーツに圧を分散させる」。起立よりやや難易度は高いが、繰り返し練習して定着させよう。
四十肩・五十肩をシンプルに改善
2つめは、ミドル世代の多くが悩む四十肩・五十肩のセルフケア。
まず肩を挙上させて、どのくらいの可動域があるかをチェックしておく。
腕を下ろした状態で、腕を外側・内側に捻って、どちらがやりやすいかを確認。やりやすい方向に捻ったまま、挙上させると上げやすくなる。そこから捻りを戻して肩を下げる。
その後、普通に肩を上げると最初よりもラクになっているはずだ。
本書にはこのほか、肩こり、首こり、膝痛をとる、階段の上がり下りがラクになる「瞬間整体」が掲載されている。ただ、世の中にある多くの整体メソッドと異なり、FS整体はやり方そのものよりも、「考え方や捉え方を大切にする」ため、上で挙げた手法は、あくまでも簡素化したエッセンスだ。筆者のように、長年の身体的な不調があるなら、上原院長に直接みてもらうのがいいかもしれない。ともあれ、悩んでいるよりは実践に如くはなし。まずは、やってみることをすすめたい。
【今日の健康に良い1冊】
『究極の身体調整法 瞬間整体』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った映像をYouTubeに掲載している。