日本古来の儀式やしきたりというものが、簡略化されたり、省略されていく傾向にあります。昨今は婚礼においても割愛されたり、あるいは現代風の違った形式に置き換えられているケースも見られます。しかしながら、日本古来の儀式が本来どういう意味を持ち、どのように執り行なわれてきたのかを理解したうえで、実施するのか取りやめるのか決めてもいいのではないでしょうか?
結納を行なうとなれば、準備する必要のある結納品、それぞれの由緒や意味を理解しておく方がよいでしょう。本記事では、何を準備し、どのように飾ればいいのかをご紹介いたします。
目次
「結納品」とは?
結納品の正式な9品目
結納品の飾り方
結納品の処分方法は?
最後に
「結納品」とは?
「結納品」とは、正式に婚約をするにあたって、男性側が女性への誠意として準備する「結納の品々」のことです。地域によって結納品の数や種類も異なります。また、品物だけでなく、並べ方や男性側からのみ贈るのか、双方で交換するなどやり方も様々です。
大きく分けると「関東式」と「関西式」の2種類があります。結納は男性側が主となり進めていきますが、どのスタイルにするのかは両家でよく相談してから決めましょう。用意する品は地域性を考慮したうえで、お互いの経済状況や住宅事情も考えて準備するべきです。贈る相手が、都会の住まいで住宅に余裕スペースがないにもかかわらず、形式にこだわるあまり品数を増やすと迷惑になる恐れもあります。
最近ではコンパクトな「結納セット」も結納専門店や百貨店などで用意されています。結納が決まれば一度相談してみてもよいでしょう。
結納品の正式な9品目
いざ結納品を準備するとなると、何をどのようにしていいのか悩みませんか? 最近では便利でコンパクトな「結納セット」もあります。インターネットや百貨店などで販売されており、関東式や関西式、九州式などの地域ごとに合わせたセットや、正式な結納で使える「正式結納セット」や略式の結納で使う「略式結納セット」も存在します。
関東式と関西式を比較すると、関西式は豪華な「鶴飾り」や「亀飾り」の結納飾りが存在し、品数も9~11品目あり華やかな印象です。関東式は5~9品目で、豪華な結納飾りはありません。
ここでは、関東式の結納品の「正式な様式」とされてる9品目を紹介します。関東式では、結納品全てをまとめてひとつの台に置いて飾ります。
1:目録(もくろく)
結納品の品名と数が記載されたもの。リストのようなものです。
2:長熨斗(ながのし)
あわびを干して伸ばしたもの。昔から貴重な食材であるあわびは、不老長寿を象徴する最高級の品とされ「不老長寿」の願いが込められています。
3:金包(きんぼう)
結納金を包んだもの。表書きは男性側の場合は「御帯料(おんおびりょう)」や「小袖(こそでりょう)」とし、女性側の場合は「御袴料(おんはかまりょう)」とします。
4:勝男節(かつおぶし)
かつおぶしのこと。勝男武士とも書き、男性の強さを表すためのものといわれています。
5:寿留女(するめ)
するめのこと。するめは長期保存できるので「末長いご縁を」と願いが込められています。
6:子生婦(こんぶ)
昆布のこと。「よろこぶ」の意味を含め「子孫繁栄」「子宝に恵まれますよう」の願いが込められています。
7:友志良賀(ともしらが)
白い麻糸のこと。「共に白髪になるまで夫婦円満で」の願いが込められています。
8:末廣(すえひろ)
白無地の扇子のこと。寿恵廣とも書きます。純潔無垢を意味し「末広がりの幸せと繁栄の願い」が込められています。
9:家内喜多留(やなぎだる)
柳の酒樽のこと。家の中に多くの喜びが溜まるよう願いが込められています。最近では家内喜多留として、現金を包むことが増えているようです。
結納品の飾り方
結納品の飾り方は、大きく分けて「関東式」と「関西式」の2種類にわかれます。「関東式」とは、北海道、東北、関東、沖縄を指し、「関西式」は関西、近畿、東海、中国・四国地方を指します。九州式は九州全般ですが、関西式とほとんど同じようです。
和室がある場合は床の間に飾ります。床の間がない家庭の場合は、座敷の上座にあたる場所に毛氈(もうせん)をひき、その上に飾りましょう。洋室のみの家庭の場合は、テーブルの上など高い場所であれば、そこでもかまいません。
関東式
関東式では、結納品全てを台に乗せ飾ります。右から順番に目録(もくろく)、長熨斗(ながのし)、金包(きんぽう)、勝男節(かつおぶし)、寿留女(するめ)、子生婦(こんぶ)、友志良賀(ともしらが)、末廣(すえひろ)、家内喜多留(やなぎだる)を並べます。
9品目が正式とされていますが、勝男節(かつおぶし)と友志良賀(ともしらが)を省いた7品目の場合と、そこからさらに寿留女(するめ)と子生婦(こんぶ)を省いた5品目にする略式もあります。最近ではさらに簡略化された長熨斗(ながのし)と金包(きんぽう)、末廣(すえひろ)の3種類だけの場合も増えているようです。
関西式
関西式では、結納品をひとつずつ、それぞれ台にのせて飾ります。和室の場合は、床柱に近い方から松、竹、梅の順番で並べられます。
松、竹、梅とはそれぞれの結納品に添える飾りのことです。長熨斗(ながのし)には鶴飾りを添え、寿恵廣(すえひろ)には亀飾りを添えます。小袖料(こそでりょう)に松飾を。これは結納金を意味します。 家内喜多留(やなぎだる)には竹飾りを。勝男節(かつおぶし)には梅飾りを。基本はここまでで、全てに飾りがついています。
これに加えて、婚約指輪を意味する結美和(ゆびわ)、共に長生きするよう願いを込めて準備する高砂(たかさご)人形、これらを加えて7品目にしたり、あとは寿留女(するめ)、子生婦(こんぶ)を加えて9品目にする場合もあります。
結納品の処分方法は?
結納品を贈られた側は、挙式が終わるまで、自宅の床の間や応接室がある家庭はそこに飾ります。結納から挙式までが長期間になる場合は、大体1か月ほど飾ったあとはしまい、挙式の1か月前くらいから再び飾ります。
その後の処分方法ですが、するめなどの食品は食べて、その他のものは神社やお寺などでお炊き上げをお願いして処分するのが望ましいです。その場合、神社であれば「初穂料」として、お寺であれば「御香料」としてお礼を渡しましょう。
お正月飾りに加工するなどして、保存することも可能です。
最後に
「結納品」はこれから結婚する子どもたちの幸せな未来を願うもの。地域による結納品の違いもあるので、一方的に押し付けるのではなく、両家での相談は非常に大切です。お互いの習慣の違いを認識し合うことが、今後の円滑な家族関係に繋がります。この記事が、少しでも結納品を準備される際の参考になれば幸いです。
監修/トップウェディング(https://top-wedding.jp)
構成・執筆/吉川沙織(京都メディアライン)
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