文/鈴木拓也

いまや、規模の大小を問わず、ほとんどの企業が自社のホームページを持つ時代になった。

しかし、これを業績の向上に役立てている企業は、実は多くはない。

かなりの制作費をかけたにもかかわらず、ホームページを「放置している“デジタル音痴”の経営者が少なくありません」と語るのは、(株)コウズ 代表取締役の浜野耕一さんだ。

Webマーケティングのプロである浜野さんは、著書『デジタル音痴の経営者でも作れる 業績を上げるすごいホームページ』(幻冬舎)で、次のように続ける。

確かに、ひと昔前のホームページの役割は企業の「名刺代わり」程度でしたが、最近では積極的に活用することで、さまざまな経営課題を解決できるツールへと進化しています。わざわざ営業スタッフを雇ったり、求人媒体に費用を掛けたりしなくても、ホームページから直接集客販売したり人材を採用したりすることができるのです。(本書2pより)

そう、ホームページを巧みに生かすことで、かつては考えられなかった成果をあげられるのだ。しかし、このチャンスをみすみす逃してしまっている企業は多い。原因は他ならぬ、その企業の経営者かもしれないのだが……。

デジタル音痴克服は「簡単」

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が流行して、はや5年。

経産省によれば、その定義は「デジタルを活用して企業を変革する」というもの。予算に制約のある中小企業には、関係のない話と思われるかもしれない。だが、中小企業であっても、ホームページの活用が「鍵を握る」と浜野さんは言う。

しかし、この足枷になりかねないのが、経営者のデジタル音痴。浜野さんがやりとりした経営者の中には、「自社のホームページを一度も見たことがない」人がいるほどで、まずここからテコ入れしなくてはいけない。

一見、根の深い課題に思えるが、デジタル音痴から脱却するのは「簡単」だという。

専門用語をいつも使っている言葉に置き換えれば、簡単に理解できて言葉の壁を越えられます。制作会社に経営者にも分かるようなやり取りをしてもらうように要請してもいいと思います。(本書81pより)

例えば、PV(ページビュー)は閲覧数、UX(ユーザーエクスペリエンス)はユーザー体験というふうに。あわせて、専門用語の意味や定義をざっくり把握するだけでも、デジタルへの心理的抵抗感は相当減るはずだ。

この壁を乗り越え、自社ホームページをリニューアルし、「攻めのホームページ」にしていこうと考える経営者もいるだろう。

この場合、最初に考えるべきはホームページの「目的」。単にデザインの見てくれを良くするのではなく、人材採用の強化が目的なのか、売上につなげるのが目的なのかを考える。それが採用なら、新卒か中途か、中途ならどの職種・ポジションの人材を求めているか明確にしていく。本当のスタートはここからだ。

明細の見えない見積もりに要注意

「名刺代わり」であった自社ホームページをバージョンアップするには、大なり小なり制作費用がかかる。

制作会社は全国に約2万社あるといわれるが、なかにはびっくりするような激安価格を謳っているところもある。しかし、「激安価格では成果に結びつくホームページを制作するのは困難」だと、浜野さんは釘を刺す。

成果を追求するという視点では、ホームページの制作費に3層の相場があるという。つまり、「50~100万円、100~250万円、300万円以上」で、浜野さんはそれぞれファミリーレストラン、専門のレストラン、一流のレストランになぞらえる。さて、あなたの会社のホームページは、どんなレストランに模様替えして、見込み客を呼び込みたいだろうかという話になる。

ここで注意したいのが、300万円の見積もりを出してきた制作会社が、本当に一流のレストランにしてくれるのかという点。なかには悪質な制作会社もいるそうで、そうしたところは「耳を疑うような金額」を提示し、かつその内訳を明確にしないという。なので、それなりの金額を出す以上、きっちりと納得のいく明細を見せてくれる制作会社にすべきだ。浜野さんは、これについて「普段から明細を確認して知見を蓄積」していくようアドバイスしている。

年間約100万円の更新費用を確保

ホームページの制作あるいはリニューアルにあたって忘れてはならないことに、制作費とは別に、その後も継続的に費用が発生する点が挙げられる。

初期投資を奮発して一流レストランクラスの費用をかけ、その後が続かないよりは、「制作費を削ってでもホームページを育てる費用にお金を掛けて欲しい」と、浜野さんは記す。その費用の目安は、1年あたり約100万円。

更新費用が年間およそ100万円と聞いて驚く経営者が多いのは、制作費に相当する金額が年間でも必要になるからですが、更新費用は多くの経営者にとって想像しにくいことなのかもしれません。しかしホームページは人材と同じであり、年間100万円で営業担当者を雇うようなものだという考え方に納得できると話が前に進みます。(本書133pより)

完全デジタルの「営業担当者」は、日夜集客し続けながら、売り上げに結び付けてくれる頼もしい味方。そう考えれば100万円という費用は安いといえそうだ。

ただし、完全に制作会社任せにするのではなく、日々の細かい改善は自社運営を目指す。経験豊富な制作会社といえども、あなたの業界・事業について深く理解しているわけではない。そのギャップを埋めるため、自社人材を養成し、運営することが肝要となる。

* * *

本書のケーススタディを見ると、問い合わせが月に1件程度しかなかった住宅メーカーが、3年で問い合わせ数が41倍になった例など、ホームページの底力は侮れないものがある。「名刺代わり」のままでは、もったいない。本書を参考に、ぜひともホームページの強化をはかってほしい。

【今日の経営知識を深める1冊】
『デジタル音痴の経営者でも作れる 業績を上げるすごいホームページ』

浜野耕一著
幻冬舎

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

 

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