取材・文/沢木文
「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
2022年11月8日、内閣府は『配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数等』の最新データを発表した。これは、家庭内における配偶者からの暴力行為(DV)の相談件数をまとめたものだ。2002年度は約3.5万件だったが、2014年度は約10万件の大台を突破。2021年度の最新データは約12万件だった。政府もDV防止法改正案を策定し、来年の通常国会への提出を目指しているという。
「男の言いなりになる女の気持ちがわからない。そんなことをされたら、逃げればいいのに。自分の人生の主導権を握れない女性を見ると、いつも腹立たしく感じる」と語るのは、千秋さん(派遣社員・57歳)だ。
高校在学中に、人気の教師と交際していた噂
千秋さんと親友・佳奈江さんは、高校の同級生だ。「あまりレベルが高くない女子校の教室の隅にいるような女の子」と当時を振り返る。在学中に親しくしていたが、卒業後は没交渉だった。しかし、17年前に大流行していた日本発SNSで再会する。
「あの匿名SNSは私たちの世代に爆発的にブームになりました。合言葉のように“あれ、やってる?”というと、そのSNSを指したほど。匿名でできる気軽さと、“もう絶対会えない”と思っていた人と再会できる奇跡に私たちは夢中になっていたと思います」
千秋さんは夫からそのSNSを教えてもらった。千秋さん夫婦には子供がいない。不妊治療を繰り返し、授からなかった。2人で悲しみを乗り越えてきて、今では友達のような関係だという。
「主人が高校の同級生と再会したと聞き、私も出身校を検索したんです。すると、卒業生が集まるコミュニティを発見。匿名がルールでも、なんとなくお互いがわかるもんですね。“もしかして千秋?”とメッセージが毎日のように来ました。クラスのリーダー格だった女子が、私たちの学年専用のコミュニティを作成。そこで、佳奈江と再会したのです」
佳奈江さんは、幸が薄そうで色気がある女性で、快活な千秋さんは密かに憧れていたという。
「佳奈江は色白で肌がつるつるなんです。肉感的なのにほっそりしていて、黒ロングヘアをいつもきれいに結んでいました。顔立ちが整っているわけでもないし、地味なのに注目される人っているじゃないですか。彼女がまさにそれ。声も澄んでいてかわいかった」
佳奈江さんには在学中にある噂があった。それは、女子生徒に大人気だった国語の先生と交際しているという噂だ。
「国語科研究室から顔を赤くした佳奈江が出て来たとか、先生のアパートに入るところを見たとか、根も葉もないうわさです。私はその先生のことが好きでもなんでもなかったので、“佳奈江を許せない”と鼻息を荒くするクラスメートを冷めた目で見ていました。卒業してからも、ずっと存在は気になってたのですが、佳奈江は引っ越してしまったので、連絡の取りようがありませんでした」
【密かに憧れていた人からメッセージが来る……次のページに続きます】