「千秋だよね。会いたかったよ」
SNSを始めて半年が経過したころ、「千秋だよね」というメッセージが来る。ニックネームを見ると、「☆リリー☆」とあった。返信すると「誰だと思う?」と来た。千秋さんはそこでイラっと来たが、「ごめんなさい。わからないわ」と返信。
「向こうからメッセージを送って来たのに、私が“ごめんなさい”って謝らなくちゃいけないことに腹が立ったけれど、こっちは大人だから、冷静に返信したんです。すると“佳奈江です”と。驚きと嬉しさが同時になだれ込んでくるような気持ちでした」
その後、千秋さんが「あなたを探していた」とメッセージを送る。そのうちにもどかしくなり、その日の夕方に会うことになった。
「当時の私たちは40歳。私は派遣でSEの仕事をしていたし、千秋は13歳と17歳の娘がいるという。千秋は夕食の準備の後なら家を出られるけれど、あまり時間がないという。一方、私は仕事が終われば時間の自由が利くので、千秋の家の近所にあるカフェを指定したのです」
そして、感動の再会。佳奈江さんはカフェの奥に座っていた。ツヤツヤの黒髪のほっそりとした後姿を見て、すぐにわかったという。
「相変わらず色気があるな……と思って、正面に座ると、眼帯をしているんです。“久しぶり”の前に“どうしたのよ!”という驚きがありました。千秋は“転んだの。私ってドジだから”と言う。痛々しいほど細い手首には青あざがありました。これはDVだと直感したのです」
佳奈江さんは高校を卒業後、短大に進学。卒業後は高校在学中から交際していた教師と結婚し、長女を授かる。すると教師は「俺とコイツ(娘)とどっちが大切なんだ」と娘に嫉妬をするようになったという。
「そして、先生は幼児還りをしたそうです。思い通りにならないと、1歳にもならない娘に手を上げるようになり、佳奈江は体調を崩し、消化器官系の病気を発病。そのときに、相談し、離婚をサポートしてくれたのは、佳奈江の主治医だったそう」
教師は佳奈江さんに執着した。当然、離婚は困難を極めたが、家庭裁判所で離婚の判決が下った。そのとき、主治医は佳奈江さんにプロポーズする。
「それが再会当時の佳奈江のご主人。この人も本当に大変な人で、私たち夫婦が手伝って、離婚させてあげたんです」
【結婚する男性を次々とダメにする魔性の女……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。