取材・文/沢木文

「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。

朋絵さん(仮名・62歳)は、30年ぶりにできた女友達・恵麻さん(56歳)との恋愛にも似た感情を持て余しているという。

夫の死後、友達の作り方を忘れていたことに気付いた

朋絵さんは、2年前に30年間連れ添った夫(享年70)を亡くした。死因は新型コロナウイルスに感染したことによる肺炎だった。

「主人は企業戦士で、仕事ばかりしていました。身長は175センチでそこそこ大きい方だったんですが、体重は90キロ近くあったんですよ。コロナの前から“痩せなさい”とか“食べすぎだ”とか言っていたんですけれど、どこ吹く風。甘いものをバクバク食べながらお酒を飲んで、見ているこっちが気持ち悪くなるくらいでした」

夫婦の会話は「そんなに食べていたら生活習慣病になる」という脅しが中心だったという。それでも夫は食べ続け、飲み続けた。

「定年になった後も、ちょこちょこボランティアやベンチャー企業のアドバイスなどを頼まれて、仕事をしに行っていたんです。エネルギッシュな人だから、女性もいたと思いますよ。きっと女性の家で何かしていたんでしょう」

朋絵さんは、28歳のときから専業主婦をしている。夫とは見合いで知り合い、半年もたたずに結婚した。10歳近く年上の夫には離婚歴があり、年下の朋絵さんをかわいがった。わがままを言っても「かわいいね」と見守り、小言が多い朋絵さんの発言は聞き流していたようだ。

「主人は前の妻との間に子供がいるから、そんなに積極的ではなく、子供は授かりませんでした。私は仕事も人付き合いも得意ではないので、夫の希望に沿って専業主婦になったんですけれど、手持ち無沙汰なんですよね。とはいえ働く気にもならないので、結婚30年間、習い事をしたり、家事をしたり、親と旅行に行ったりして過ごしていたんです」

友達も、学生時代の同級生とたまに会う程度。新規の友達はほとんどいなかった。

「主人が亡くなって、張り合いがなくなったので、友達をつくろうと趣味で繋がるSNSを始めたんです。私の趣味はレジン(樹脂)を使ったアクセサリー作り。フリマアプリに出すとけっこう売れるので、同好の士と出会いたかったんです。でもいざ、SNSをやって気づいたのは、友達の作り方がわからないこと。ライブ機能などで、みんなが集まったりするのですが、発言のタイミングも内容もわからないんです」

【「そんなにへりくだらないでください」……次のページに続きます】

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