会社にお勤めの方は、年末調整で1年間の税金が精算されます。しかし、これから副業を始めようとする方であれば、副業分の収入についてはご自身で確定申告を行い、納税手続きをしなければなりません。ひと昔前であれば、税務署に直接行って手続きをしていましたが、今はe-Taxにより確定申告ができ、パソコンやスマートフォンで簡単に手続きが可能になりました。
そこで今回は、日本クレアス税理士法人の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、副業をする方が知っておくべき確定申告の方法と、必要書類や流れについてお話しいたします。
目次
確定申告はいつ行う?
確定申告に必要な書類とは?
確定申告の流れ
確定申告を行うにあたっての注意点とは?
まとめ
確定申告はいつ行う?
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの所得に関して、翌年の2月16日から3月15日までに手続きを行う必要があります。
新型コロナウイルス感染症の影響により、期限内に申告・納付等ができなかった場合には、個別に延長手続きを受けることは可能です。しかし、原則的には上記日程で確定申告書を提出する必要があります。なお、消費税を納税する必要がある方は、3月31日までに手続きが必要です。
期限内に提出しなかった場合には?
期日までに確定申告書の提出と納税を行わなかった場合には、以下のペナルティが発生します。特に副業を始めて初年度の方は、期日までに必ず手続きを行いましょう。
・無申告加算税
・延滞税
・青色申告の取り消し
無申告加算税とは、期日までに手続きをしなかったことで、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%が加算されてしまいます。
例えば、納税金額が100万円の場合には下記の金額をさらに上乗せして納税をしなければいけません。
50万円 × 15% +(100万円 - 50万円)× 20% =17万5千円
延滞税は、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課税されます。また、2年間続けて期限までに申告書を提出しなかった場合には、青色申告の取り消しの処分により、青色申告者に優遇されている各特例が使用できなくなってしまいます。
確定申告に必要な書類とは?
お勤めされている以外で収入がある場合について、代表的な3つのケースについてご紹介したいと思います。
・フリーランスや自営業などの個人事業主
・不動産収入がある方
・株の取引が発生する方
共通必要資料
(1)確定申告書B様式/収支内訳書や青色申告決算書
(2)マイナンバーカード、もしくは通知カードやマイナンバーの記載のある住民票の写し等のうちいずれか1つと運転免許証/パスポートなどの身元確認書類
(3)預貯金口座番号がわかるもの
(4)給与所得の源泉徴収票
(5)扶養親族のマイナンバーがわかる書類
(6)医療費の領収書
(7)ふるさと納税などの寄付金の領収書
フリーランスや自営業などの個人事業主
収入金額がわかる資料、収入を得るためにかかった交通費や交際費などの領収書、車を使っている場合には、購入金額がわかる資料が必要です。交際費は事業のために使ったものに限定されます。そのため、プライベートで使った飲食代などは経費に計上できないため注意が必要です。
不動産収入がある方
不動産の管理会社から発行されている家賃の収支明細や、家賃が振り込まれている通帳のコピー、固定資産税や水道光熱費などの経費がわかる資料を準備します。また、建物などの固定資産をお持ちの方は、減価償却費の計算をする必要があるため、不動産を購入した際の売買契約書も必要です。
株の取引が発生する方
FX取引や特定口座で株式の取引を行っている場合は、FX取引の損益がわかる資料や、特定口座の年間取引報告書が必要になってきます。特定口座で取り扱っている上場株式で損失が発生している場合でも、確定申告を行うことでその損失を3年間にわたり繰越すことができるため、忘れずに確定申告をしましょう。
確定申告の流れ
確定申告書B様式や収支内訳書、青色申告決算書に収入や経費などの必要項目を入力して税額を計算します。確定申告は以下3つの方法により提出が可能です。それぞれの方法をご説明いたします。
・e-Taxで申告
・住所地の所轄税務署に直接提出
・郵送または信書便により住所地等の所轄税務署へ送付
e-Taxで申告
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」の画面の案内に従って金額等を入力することで、申告書を作成することができます。作成した申告等データはe-Taxで送信することができるため、税務署に行かずに自宅から申告することが可能です。e-Taxを利用する場合には、マイナンバーカードの取得や、ICカードリーダライタの購入などの事前準備が必要となります。
住所地の所轄税務署に直接提出
必要資料を準備のうえ、住所地の所轄税務署に直接資料を持参して提出を行います。税務署の職員が確定申告書の記載方法などを教えてくれるため安心して手続きができますが、受付期間は混雑することが多いので注意が必要です。
郵送または信書便により住所地等の所轄税務署へ送付
確定申告書と準備資料を同封のうえ、住所地の税務署に郵送することで提出が可能です。確定申告書は「信書」に該当し、税務署に送付する場合は「郵便物(第一種郵便物)」または、「信書便物」として送付する必要があります。
確定申告を行うにあたっての注意点とは?
確定申告の必要書類と手続きの流れは上述したとおりですが、申告前に下記項目について事前に準備が必要となるため注意が必要です。
・個人事業の開業届出書
新たに事業を開始したとき、事業の開始の事実があった日から1月以内に、住所地の税務署に提出が必要となります。
・青色申告書の承認申請書
事業所得や不動産所得が発生する方は、申告をしようとする年の3月15日までに申請書を住所地の税務署に提出する必要があります(1月16日以後に事業を開始する場合には、その事業開始日から2か月以内)。
青色申告を行うことで、青色申告特別控除や少額減価償却資産の特例など、税務面で優遇される特例が活用できるため、忘れずに申請をしましょう。
・帳簿の作成/領収書の保管
1年間の取引をまとめて行うと、期日までに間に合わなくなるリスクが高くなるため、日々の取引はこまめにすることをおすすめします。また、領収書や請求書といった取引の記録は、7年間の保存義務があるため、それらの書類を保管・整理しておくことも大切です。
まとめ
副業として収入があるにもかかわらず、確定申告書を提出していないとペナルティが発生します。本来支払わなくてもよかった税金まで支払うことになるので、手続きを怠らないでいただきたいと思います。副業の収入についても、いろいろなケースがあるでしょう。それに応じて必要資料や適用できる優遇税制が異なります。今回ご紹介した手続きの方法や必要資料をご参考にしていただき、ご自身で申告することが難しいと感じる場合には、税理士にご相談することをおすすめいたします。
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)