とにかくカッとなり声を荒立ててしまう、イライラした後に落込む、急に顔が熱くなったり、汗が止まらなかったり、どうしてこんなに頭が痛いの? など、30~40代の「プレ更年期」や、40~50代の「更年期」の女性には、自分ではどうにもならない不調があらわれることがあります。
実は、その不調には漢方がよく効くことをご存知でしたか? 私の不調にも漢方が効くのか知りたい! どうすれば根本解消できるの? そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。
第72回のテーマは、「気分のムラ」です。医師の木村眞樹子さんに教えてもらいました。
気分の浮き沈みが激しく、家族に迷惑をかけてしまう
顕子さん 51歳女性 パートの方からご質問を頂きました。
「気分のムラが激しいことに悩んでいます。気分の良い日は朝から絶好調、早起きして朝活し、人との会話や仕事も楽しくこなせます。かと思えば、何の理由もないのに突然落ち込み、やる気がなくなり表情や言動が消極的になる日も……。
『何もかもやめたい』『何のために生きているのだろう』というところまで落ちる日もあります。落ち込むだけでなくイライラして攻撃的になるので自分でも厄介です。調子が良い日もあるのでなんとか生活や仕事はこなせていますが、落差が激しすぎて家族に迷惑をかけています。
夫には『浮き沈みが激しすぎてついていけない』と言われ、さらに自分を責めてしまいつらいです。気分のムラは更年期の症状なのでしょうか? 」
ご質問ありがとうございます。原因がよくわからない不安や落ち込みで、周囲の人間関係にまで影響を及ぼすのはつらいですよね。
その気分のムラの原因は、おっしゃるとおり更年期が影響しているかもしれません。その原因と対処法について、今回はご紹介します。
気分のムラの原因は更年期の女性ホルモンの減少
閉経を挟んだ10年間、私たちの体には様々な変化が起きます。女性ホルモンの分泌量がゆらぎを伴いながら減少し、その弊害がいろいろなところに起きるのが更年期症状です。
女性ホルモンであるエストロゲンは、幸福感や精神的な安らぎを得るセロトニンというホルモンの分泌にも関わっています。このセロトニンは俗に「幸せホルモン」とも呼ばれ、心の変化にも大きな影響を及ぼします。
更年期にエストロゲンが減少すると、セロトニンの分泌も低下し、些細なことで落ち込んだり、心が不安定になるのです。
また、それとは別に、更年期は人生においても多様な変化が起きる時期です。親の介護問題や、子どもの独立、夫が定年で家にいる時間が増えるなど、生活の変化がストレスになり、更年期の肉体的変化と重なってより大きな影響を与えてしまいます。
続いては、そんな厄介な更年期の気分の落ち込みを少しでも和らげ改善する、簡単なセルフケアをご紹介します。
気分のムラを解消する3つのセルフケア
更年期の不調の治療法のひとつに、ホルモン補充療法があります。これは、不足しているエストロゲンを薬で補い、ホルモンバランスの乱れを和らげていく方法です。効果はありますが、同時に副作用などのリスクもありますので、通院して治療することが必要です。
ホルモン療法は怖いという方や、通院する時間がないという方には、漢方の考え方によるアプローチがおすすめです。
1.体と心をほぐすヨガとストレッチ
体と心は連動しています。習慣的に体を動かすことで、毎日の生活でため込んだストレスをスッキリと解消でき、それが精神の安定にもつながります。
特に、ある研究では「寝る前の10分のストレッチで抑うつが改善した」※1という結果データもあり、運動と心の関係は注目されています。
参考 ※1 寝る前10分のストレッチで更年期症状と抑うつが改善|研究の紹介│体力医学研究所│公益財団法人 明治安田厚生事業団 https://www.my-zaidan.or.jp/tai-ken/introduce/detail.php?id=c3b41ea2c8e0023043386d9dfbc4c097&tmp=1546896998
更年期の心の安定に効果的が期待できるヨガとストレッチを、2つご紹介します。
・英雄のポーズ
股関節を伸ばし、下半身や体幹など全身を強化できるポーズです。
(1) 両足を揃えて立ち、そこから左足を後ろに引き、漢字の「人」のようなポーズをとります。
(2) 左足のつま先を外側45度に向け、左足に力を入れたまま、左足の膝をゆっくり曲げます。
(3) 両手を上に伸ばし手を合わせ、ゆっくりと5回呼吸をします。
(4) 足を入れ替え、同様に行います。
<ポイント>
・重心が体の中心にくるように、両足の力のバランスをとりながら行いましょう。
・子どものポーズ
全身の力を抜き、リラックスできるポーズです。
(1) 正座の状態で両膝を腰の幅ほどに開きます。
(2) 上体を少しずつ前に倒していき、額を床につけます。その状態で全身の力を抜き、ゆっくり息を吐きましょう。
<ポイント>
・両腕は手のひらを天井を向けた状態で、足裏の隣におきましょう。
・お尻は浮かせず、かかとの上に乗せることを意識します。
・おなかと太ももはピッタリと密着させましょう。
このふたつはヨガでも行われる、有名なポーズです。体と心をほぐし、ストレスを緩和する効果が期待できます。
2.自分だけの時間をつくる
気持ちの安定のためには、意識して自分だけの時間をつくることも大切です。誰にも邪魔されない自分ひとりの時間を確保することで、心にも余裕が生まれます。
特に、生活の変化に対する戸惑いで多く挙げられるのが、パートナーとの関係です。定年やリモートワークなどで、夫と家で顔を突き合わせる時間が長くなると、些細なことから夫婦喧嘩になり、関係性がギクシャクしがちです。
そういうときは、自分だけの時間を作り、思うままに行動できるスケジュールを組んでみましょう。
たとえば、「毎週ひとりで映画を観に行く」「少しだけ遠出して普段入らない店を利用してみる」など、小さなことでも構いません。
日々の喧騒から少し離れ、心の充電をしっかりと行うことで、毎日にも余裕が生まれます。
細かなストレスの要因が少しずつ減っていき、自然と夫婦の対立や家族とのトラブルも減ってくるでしょう。
3.更年期の気分のムラに漢方薬で対処する
更年期症状で精神的に追い詰められてつらいという方には、医薬品として効果が認められている漢方薬がおすすめです。産婦人科学会でも、全体的な心とからだのバランスの乱れを根本から回復させるための薬物療法のひとつとして、漢方薬があげられています。
自然由来の「生薬」を組み合わせて作られる漢方薬は、副作用リスクが西洋薬より少ないといわれています。中国発祥ですが、現在の漢方薬は日本で独自に発展し、伝統医学として定着したものであり、長い歴史のなかで効果が認められています。
また漢方薬は苦しみから逃れるだけの対症療法ではありません。根本的な部分をしっかりと解決すべく、からだの内側から時間をかけてアプローチしていきます。体質改善に働きかけ、「つらい症状に正面から立ち向かって解決したい」という思いに応えてくれます。
「難しい食事療法や運動を続けるのは無理」という方も、症状や体質に適切な漢方薬を毎日飲むだけなので、簡単に継続できそうですね。
<気分のムラに悩む女性におすすめの漢方薬>
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):体力がある方向けの漢方薬です。精神不安がある方、更年期神経症の方に用いられます。不眠症にも処方される場合があります。
・桃核承気湯(とうかくじょうきとう):体力中等度以上の方に使います。のぼせて、イライラし、便秘もちの方に向けた漢方薬です。
漢方薬を選ぶなら、体質とのマッチングという部分が重要です。体質に合っていない場合は、十分な効果が出ず、副作用が起こることもあります。漢方のプロである医師や薬剤師等にきちんとご相談ください。
「価格面が気になる」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめです。スマホで相談できる「あんしん漢方」のような注目サービスも登場しています。
AI(人工知能)を使う「オンライン個別相談」でも、プロの知識と経験をいかした漢方薬のセレクトを行ってくれます。
更年期の気分のムラは対処できる
更年期は体と心に急激な変化が起き、戸惑ってしまうもの。気分のムラに悩まされない生活を送るためにも、きちんと症状の原因を知り、対処しましょう。
今回の記事でお伝えしたセルフケアや漢方薬は特におすすめです。あきらめずに少しずつ改善して、 体と心の変化に立ち向かっていきましょう。
<この記事を書いた人>
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