『サライ』10月号の大特集は「選りすぐりの京都」。日本の大乗仏教の基礎をつくった僧・最澄ゆかりの古寺を美しい紅葉風景とともにご案内します。
また、京都を訪れる楽しみのひとつである美食は「カウンター」に注目。今年オープンした新進気鋭の店を中心に、和食、フレンチ、鮨に天麩羅と、秋の味覚を堪能できる名店をご紹介します。
今回は、「カウンター料理の醍醐味」の中から、『日本料理 研野』を紹介します。
日本料理 研野(左京区)
ここ数年の間に開業した和食店の中でも、とりわけ話題を集めているのが『日本料理 研野』だ。店主の酒井研野さん(31歳)は、長らく修業を積んだ名料亭『菊乃井』在籍中の2016年に、若手料理人の登竜門といわれるコンテスト『RED U-35』で“ゴールドエッグ”を受賞。その後は、革新的な中華料理の店『京、静華』や薪火レストラン『LルーラURRA°』にも勤めて経験と技の幅を広げた。
今年3月、独立の場に選んだのは、平安神宮や京都市京セラ美術館などからもほど近い岡崎の地。祇園などの繁華街からそれほど遠くないのに閑静で、琵琶湖疏水沿いの紅葉や桜といった四季の風情を存分に味わえる土地だ。わずか8席のカウンターは、既に予約が取れないといわれるほどの人気ぶり。酒井さんの包丁さばきや炭火での炙りなど、調理を間近に見られるのも人気に拍車をかけている。
多彩な料理を学んできた経歴を生かし、約10品のおまかせ料理には、本格的な和食のほか、チャーシューや炒め物、酒井さんの出身地、青森の郷土料理なども盛り込まれる。
「日本に暮らすお客様が、幼い頃から召し上がってきた馴染みの料理をお出ししたい」と話す。
中でも、必ず供される一品が「天然もみじ鯛」のお造り。酒井さんが信頼を寄せるかつぎの魚屋が、水槽付きのトラックで生きたままの魚をストレスなく運び、客に出す8時間前に活じめにして、最良の状態で届けてくれるという。
塩とすだちで味わうと、ほどよい甘みが、透き通るような旨味となって口中に広がる。好みで土佐醬油や鯛の肝醬油も用意してくれるので、様々な味が堪能できる。これほどの鯛には、なかなか出合えるものではない。
ほかにも、供す直前に炭火で炙って香ばしさをまとわせるチャーシューなど、緩急ある味わいの料理が続き、最後まで飽きることがない。
ジンや紹興酒など酒も多彩
女将の愛さんが厳選する意外性のあるお酒のペアリングも秀逸だ。日本産のクラフトビールのほか、紹興酒やクラフトジンにワインなど、料理を引き立てる酒を厳選。
ちなみに、チャーシューには10年ものの紹興酒、鯛のお造りには柑橘系のジンが合うそうだ。カウンター越しに酒井さんの解説を聞きながら料理とお酒に舌鼓を打つ。京都だからこそ生まれた新名店である。
日本料理 研野
京都市左京区岡崎徳成町28-22 電話:075・468・9944 営業時間:17時~、20時~(2部制)定休日:月曜、日曜 料金:夜1万4300円 カウンター8席、予約制。交通:京阪本線神宮丸太町駅より徒歩約8分