文/小林弘幸
「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。
【小林式処方箋】即断せずに、出欠の返事を1日遅らせてみる。
参加する目的が明確か
飲み会が大好きで、毎日でも行きたいというなら、それでいいのです。しかしたいていの人は、一度は「参加します」と言ってしまったものの、「ああ面倒だな」「行きたくないな」と思う飲み会があるのではないでしょうか。しかも週に何度も飲み会があれば、さらに憂鬱です。
もし朝起きて、「ああ今日は飲み会か。憂鬱だな」と思ったとします。もうその時点で、あなたの自律神経は乱れ、その日1日を棒に振りかねません。少なくとも、最高のパフォーマンスを出せることはないでしょう。
ではどうするか。最初から「参加します」と言わなければいいのです。
私が実行しているのは、「最低1日考えてから返事をする」というものです。どんな誘いであっても、誰からの誘いであっても、即答は絶対にしません。たいていの場合、その場の勢いに流されたり、その時の浮ついた気分でOKと返事をしてしまったりするので、あとあと後悔するのです。
私の場合は、1日、間を置くことで、次の点を明確にします。
いったい自分は何のために、何を目的にして、この飲み会に参加するのか。
いわば、自分の中の目的を明確化するのです。
例えば職場の同僚に誘われたとしましょう。毎回毎回、顔を出しているなら「今回は行かなくてもいい」となるでしょう。逆に、断り続けているのなら「たまには顔を出して、人間関係をメンテナンスしておくか」という目的が生まれます。
目的が明確ならば、その目的が達成されればいいので、その飲み会が楽しかろうが、そのところは問題になりません。もし「楽しむ」という目的を設定するなら、「楽しめる」飲み会を厳選すればいいのです。
つまり「目的が自分の中で明確なら参加する」「目的が見つからないなら断る」と、自分の中で判断基準を持つのです。そして、1日経って冷静に返答すれば、何の問題もありません。「ああ今日は飲み会か。憂鬱だな」と思ってしまうのは、そもそもの決め方に問題があったのでしょう。
断ってもマイナスにはならない
「断ったら角が立つんじゃないか」と心配する人もいるかもしれません。しかし私の経験上、それは心配に及びません。「飲み会を断る人間だ」と認識されるだけで、それで仲間はずれにされたことはありません。
誘っているほうも、何もあなただから声をかけているわけではない、というケースも多いのです。単なる人数あわせだったり、あるいは単に愚痴を言いたいだけだったり。誘ってくるのは相手の「わがまま」なのですから、参加する目的が見出せない場合は、あなたも「わがまま」に断ってしまえばいいのです。
ポイントは、雰囲気に流されないためにも、間をあけること。そして「どうしようかな」と迷わず、どんな判断であってもきっぱり答えること。波風を立てないように穏便に断る必要はあるでしょうが、断ることを怖れてはいけません。なぜなら、飲み会に費やす時間は、あなたの大切な時間なのですから。
『不摂生でも病気にならない人の習慣』
小林弘幸 著
小学館
定価 924 円(本体840 円 + 税)
発売中
文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。