取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、その時に感じた率直な思いを語ってもらう。
かかあ天下の家庭で育ち、家族仲も良好。大学、就職先など、一度の挫折も経験せず大人に
今回お話を伺った、夏子さん(仮名・39歳)は、28歳の時に友人の紹介で知り合った男性と結婚。現在は都内で小学生のお子さんとの3人暮らしをしています。結婚当初は夏子さんの思いのほうが強かった夫婦関係ですが、今は逆転。都合のいい時にばかり頼られる関係に終止符を打ちたいと言います。
「夫がコロナ禍でリモートになった仕事にやりがいを見いだせないようで弱気の愚痴を言うようになり、今までとは別人のようになってしまいました。夫婦ならそこを支え合ってとか思われるかもしれないけど、夫は今まで散々家庭を顧みずに勝手に生きてきた人。今さら感で頼られることに苦痛を感じています」
夏子さんは栃木県出身で、両親と3歳下に妹のいる4人家族。優しい雰囲気の父親に、年上で勝気な母親、そして家族が女性ばかりということもあり父親の威厳など一切感じたことのない家庭で育ちます。
「父親のことは大好きです。私にも妹にもすごく優しくて、怒られた記憶はありません。いつも怒ってくるのは母親、それを慰めてくれるのが父親という役割分担でした。父は大きくて少しぽっちゃりしていて見た目は違うけどマスオさんみたいな雰囲気があって、癒し系なんですよ。母は、小さい頃はヒステリーみたいな怒り方をしたり、気分で怒りをぶつけてこられることもあったけど、離れて暮らしてからは仲良しですね。
両親の夫婦仲は昔も今も良好で、父親が定年になってからは2人でよく出かけたりしています。妹夫婦が近くに住んでいるので、私たち夫婦よりも妹とのほうが交流があって、私たちとは年に数回会うだけの関係になってはいるんですが、定期的に連絡は取っています」
夏子さんは大学卒業後に上京して、アパレルメーカーに就職、管理部門で内勤の仕事を始めます。4年勤めた後に別のアパレルメーカーに転職した同時期に、今の旦那さまと出会います。
「前の職場の同僚と送別会で意気投合して、そこから初めて連絡先を交換した女性の方がいたんです。4年間挨拶ぐらいしかしてなかったのに、一応義理で連絡先を交換したみたいな感じで。そこから彼女とは一番密な連絡を取り合うようになって、その彼女の友人だったのが今の夫です。紹介というより、たまたま一緒に飲んだという感じでした」
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