おしゃべりする、ぼーっとする、読む、学ぶ、考える、俗世間の塵を払う──そこは人間にとって大切なものに満ちた場所。喫茶店でしか出会えない“普段着の京都”をご案内します。

「大切なのは、変わらない空気感。様々なお客さんにとってここは記憶が蘇る場所なんです」
───『進々堂 京大北門前』川口 聡さん

創業91年の『進々堂 京大北門前』。彩色タイルの壁柱など随所に創業者の感性が垣間見える。

千年を超える歴史を持つ古都はまた、“喫茶店の街”でもある。幸いにして戦災を免れた京都には、多くの老舗が健在。独特の喫茶文化が息づいている。

昭和初期に自家焙煎の草分けや欧風の調度を取り入れたサロン的空間が誕生し、新たな交流の場となった。戦後、コーヒー専門店、名曲喫茶など独自の個性を放つ店も加わり、日々の憩いと娯楽の場を供した。それら新旧の店が縦横につながり共存する中で、図らずも築かれたのが京都の喫茶店文化だ。

多様な喫茶店を支えたのは、伝統産業の職人や商家の旦那衆、画家や作家、大学教授らインテリ層。そして大学の街に集う多くの学生だった。今も京都には街区ごとに昔の土地柄が色濃く残り、街の磁場のようなものが店のあり方にも反映されている。

「大切なのは、変わらない空気感。様々な世代のお客さんにとってここは記憶が蘇る場所なんです」と、現存する京都最古の喫茶店『進々堂 京大北門前』の店主・川口聡さんは語る。

店主と客が、また老若男女の客同士が長年積み重ねてきた親密な関係が、店の“空気”を醸しだし、この街の豊かな日常を紡いできた。古都の喫茶店で一服すれば、時代を超えて息づく憩いの系譜を実感できるはずだ。

日本で初めてパン作りを学ぶために留学した続木 斉が昭和5年に開いた京都初のフランス風カフェ『進々堂 京大北門前』

企画監修・取材・文/田中慶一、撮影/塩﨑 聰

※この記事は『サライ』2021年10月号別冊付録『ぶらり、一服 京都 喫茶店散歩』より転載しました。

 

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