弘前城を囲むお堀を散った桜が埋めつくす「花筏」。

弘前城を囲む堀の水面を散った桜が埋めつくす圧巻の桜景色「花筏」。

  
■日本一のりんご産地だからこそできる「リンゴの酒」

5月5日まで開催されている青森「弘前さくらまつり」。散った桜が弘前城のお堀を埋め尽くす名物「花筏」は、まさに日本屈指の桜景色といえるだろう。

まさに「花筏」の見頃を迎えている弘前公園の桜を楽しむなら、ぜひ、地元の酒も併せてじっくり味わってほしい。弘前は城下町であることから、古くから酒造りの文化が栄えてきた場所である。その中で、ふたつの大きな潮流がある。ひとつは、日本酒であり、もうひとつは、リンゴ酒である。このふたつの酒造りが、弘前の酒文化に特異な歴史を与えてきた。

太宰治の小説『津軽』において、津軽を巡る太宰が時折、酒席で「リンゴ酒」を飲んだり、薦められる場面が登場する。

<このごろ、甲州に於ける葡萄酒のように、リンゴ酒が割合豊富だという噂を聞いていた>と、昭和19年に記した太宰だが、事実、戦時中の清酒は食料品確保のため製造が大きく制限され、リンゴ酒が民需と軍需を補うものとして一躍脚光を浴びていた時期だった。

津軽地方では、リンゴの屑実を加工することで農家の収入源を確保することなどを目的に、明治30年代からリンゴ酒醸造を模索する動きがあった。明治40年に入ると、弘前の酒造業者が発泡性のリンゴ酒を商品化するなど、弘前におけるリンゴ酒の歴史は古い。

ただし、酸味が強く、アルコール分の軽い発泡性のリンゴ酒、いわゆるシードルは、当時の市場ではほとんど評価されなかったようで、定着することはなかった。

太宰が飲んだリンゴ酒は戦時中に多く造られた、発泡性のない、醸造アルコールを加えた日本酒の代用品的な飲まれ方をしたリンゴ酒だったようだ。

太宰は、リンゴ酒よりも日本酒やビールを飲みたいものだというようなことを書いているが、清酒に代わるものとして注目を集めていたとしても、味質やアルコール分の軽さなどから、酒愛好家たちからのリンゴ酒に対する評価は当然低いものだった。

だが、現在は、リンゴ由来の酒、特にシードルについての認知度が高まり、じわじわと人気が高まってきているように思える。酸味のある爽やかな味わい、微発泡性とアルコール分の軽さなど、明治から昭和初期にかけての市場が嫌った特徴が、逆に、気軽に味わえるアルコール飲料として、女性を中心に人気が出ているのである。

そうした動きに対し、弘前市は、平成25年にリンゴ生産者や酒造業者を中心とする「弘前シードル研究会」を組織した。研究会では、シードルの勉強会や、シードルに関わるイベントの開催、そして醸造試験などを通じて、地シードルの開発と、シードルそのものの普及と消費拡大を目指している。

現在は、弘前市りんご公園内に地元のリンゴ生産者が中心となった「弘前シードル工房kimori」がオープンして、地シードルの醸造と販売を行なうなど、”シードルの街・弘前”のPRは着々と進んでいる。

弘前シードル工房kimori/bottle_top

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