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初めて観る誰もが「こんなに美しいとは!」と感動する弘前城の桜、誕生秘話(前編)

 

「日本一」の呼び声が高い弘前城の桜。石垣修繕のため、現在この天守は70m 移動している。天守がない状態を見られる機会をお見逃しなく。

「日本一」の呼び声が高い弘前城の桜。石垣修繕のため、現在この天守は70m移動している。石垣の上に天守が存在しない桜景色を見られる機会をお見逃しなく。

 

桜の名所としても名高い弘前城は、全国に12しかない江戸時代以前に建築された天守を擁(よう)するだけではない。築城時に建築された5つの城門と3つの櫓(やぐら)が当時のまま残り、堀・土塁などの城郭の全容が往時のまま保たれている極めて貴重な歴史的建築物である。日本の城郭史の泰斗(たいと)である鳥羽正雄氏は自身の著書『日本城郭辞典』において、「ここくらい完全に近く塁濠や建物の残っている城は、全日本で他に類例がない」と記している。

このように、築城時、4万5000石程度だった小藩が築いた北辺の城は、司馬遼太郎氏が「日本七大名城」のひとつにあげただけではなく、全国紙のアンケート調査などで、松本城や姫路城など、並みいる名城たちと肩を並べて、「訪れたい城」のランキングで上位に入るなど、城の愛好家はいうに及ばず、全国から高い評価を得ており、郷土の誇りとなっている。

    
■城跡を春色に染め上げる約2600本の桜

その弘前城がひときわ賑わう季節がやってきた。

ソメイヨシノやシダレザクラを中心とした約2600本の種々の桜が、次々と咲いていき、散った花びらまでもが、濠の水面を埋め尽くして、城跡全体を桜色に染め上げていく。

はじめて桜の時期の弘前城(弘前公園)を訪れた人は、皆、必ずといっていいほど、「こんな桜は見たことがない」と感じるという。

自分が今まで見てきた桜の花と、受ける印象がまったく異なることが原因だが、弘前公園の桜の特徴は、桜の花自体が大きく、豪華な点にある。

ソメイヨシノは通常、ひとつの房に4~5個の花をつけるという。だが、弘前公園のソメイヨシノは、それよりも多く花をつけており、7つの花をつける房もざらにある。それが、弘前公園の桜を、大きく華麗に見せているのである。さらには、そうした豪華な花をつけるソメイヨシノのほとんどが、もっともよく花をつける時期という樹齢30~50年を大きく超えている。さらには、ソメイヨシノそのものの寿命が60~80年といわれる中で、樹齢100年を超えるものが300本以上存在し、今、まさに豪華な花を旺盛に咲かせているのだ。

このように、弘前公園内の桜は、全国的に見て稀有な存在なのだが、花の見事さと長寿命化を果たしている大きな要因は、弘前独自の管理技術にある。

   
■リンゴ栽培に倣った剪定管理

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざがある。桜の枝は切らずにおくのがよく、梅の枝は切るのがよい、という意味だが、弘前の桜管理技術を特色づけているのは、桜の枝の適正な剪定と、積極的な施肥や土壌改良にある。いわゆる「弘前方式」と呼ばれる管理方法である。この技術が、まさに、「桜切る馬鹿」が、日本一の管理技術を生み出した。

そして、桜の剪定をはじめたきっかけは、弘前が全国一の産地であるリンゴ栽培にあった。病気や害虫に弱いソメイヨシノを、リンゴ栽培に倣(なら)って枝を切って管理するという技術は、弘前でなくては生まれなかったものといえるだろう。

主の去った城を、弘前市を中心に守り伝え、植えた桜の管理も独自の技術を生み出すほどに追求してきた。そうした、近代以降の積み重ねが、築城時の縄張りの全容を残すと評価の高い現在の弘前城跡や、日本一の桜の名所である弘前公園を生んだ。弘前の人たちが「弘前城も桜も日本一」と主張するのは、そうした、自負や誇りがあるからにほかならない。

そうした歴史を歩んできた弘前城の桜だが、とりわけ観るものの心を魅了する大樹がある。樹齢およそ130年という日本最古のソメイヨシノである。毎年、豪華な花を一斉に咲かせるこの銘木は今年、県指定の天然記念物に指定されたが、戦後まもなく瀕死の状態に陥るという時期があった……続きは<後編>へ。

文/小石川透(弘前市文化財課)

 

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