大分県は温泉数や湧出量とも日本一を誇ることから「おんせん県」と称しています。なかでも別府は温泉保養地として明治時代初期から発展。「別府八湯(べっぷはっとう)」と呼ばれ、別府、鉄輪(かんなわ)、観海寺(かんかいじ)、明礬(みょうばん)などの8か所の温泉街を中心に成り立っています。
別府の温泉は圧倒的な湧出量で、市内には100を超える共同湯があり、人々の生活に密接しています。また鉄輪では有名な地獄めぐりや蒸し湯、明礬では湯の花を採取する小屋など、地区ごとの特徴も備え、さらに様々な泉質があるというのも魅力です。
温泉の楽しみが尽きない別府ですが、春には「別府アルゲリッチ音楽祭」という国際的な催しもあります。これは世界的なピアニストのマルタ・アルゲリッチが総監督を務める音楽祭で、今年で16回目を迎えます。「音楽家と聴衆がともに育ち、ともに楽しむ音楽祭を開きたい」との思いから始まりました。
別府を「温泉」と「音泉」の街にということで、世界の一流演奏家が出演し、回を追うごとに市民ボランティアが増え、手作りの温かいもてなしも評判といいます。今年は4月24日~5月11日に予定されています。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。