文・写真/佐竹敦

にっぽん穴場紀行、今回は文字通り「穴」場をご紹介しましょう。

鹿児島県曽於市財部町の下財部に、かの高千穂峰につながっていると言い伝えられている溝ノ口岩穴(洞穴)という岩穴があります。

高千穂峰(標高1574m)といえば日本神話で天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が天照大神(アマテラスオオミカミ)の命により、葦原の中つ国を統治するため、三種の神器ととも高天原から天孫降臨したとされる場所で、山頂には霧島東神社の社宝で日本三奇の一つとされている天逆鉾が突き立てられています。

高千穂峰を望む霧島神宮古宮址(高千穂河原)は、⽂暦元(1234)年まで霧島神宮が鎮座していた旧境内地です。霧島山の大噴火により消失してしまいましたが、この古宮址は神籬斎場として現在でも祭祀が継続されていて、毎月10日には月次祭が⾏われ、特に11月10日には天孫降臨御神火祭が峰の頂上と斎場で斎⾏されているなど、社殿を失ったあとも神聖視されてきたことが伺えます。

霧島神宮古宮址

そんな日本屈指の聖地の一つである高千穂峰に通じていると言われている岩穴(溝ノ口岩穴)が、こちらです。

本当に高千穂峰に通じているのでしょうか? 中に入ってみましょう!

この岩穴は霧島山系の地下水により凝灰岩が浸食され、数千年の長い年月をかけてつくられた岩穴で、入口は横13.8m、高さ8.6m、全長は224mとのことです。実際に岩穴の中に⼊ってみたところ想像以上に広く大きい空間となっています。

穴というよりは洞窟といった感じで、思いの外に奥の方まで光が届いていて6~70mくらい進んでも高さは頭がぶつからないほどの高さがあり、地面も平坦で、幅も10m以上はありそうな感じでこのままどこまでも続いていそうな感じです。

洞窟の中から振り返ってみると⼊口の穴の先には⿃居が建っていてその姿はとても幻想的な何ともいえない神々しい雰囲気を醸し出していて、不思議と怖い、不気味という気持ちは⼀切抱かず、逆にその場を離れがたいものがあります。

日が差すとさらに一層幻想的な景観を目にすることができます。

穴の中はこの穴を作った地下水が流れる以外の音は⼀切なく、⼼が無になるような静寂の空間で、心が浄化されるような錯覚を覚えます。さらに進んで入口から200m附近には膳棚に似た形があり、地元に伝わる話によると、犬を中に入れたら高千穂峰に出てきたという伝説があるそうです。

最後に動画でもご覧ください。

この溝ノ口岩穴(洞穴)はまだあまり知られていないため、行けばこの神秘的な空間をひとり占めできる可能性が高いです。ぜひ皆さんも、⼀度訪ねてみてはいかがでしょうか。

文・写真/佐竹敦
日本全国の即身仏・一之宮・五重塔・三重塔・滝百選・棚田百選・国分寺跡をすべて訪ね歩いた一人旅の達人。テレビチャンピオン滝通選手権出場。主な著書に「この滝がすごい!」「日本の滝めぐり」等。テレビ東京の「厳選!いい宿ナビ」のコラム執筆、@nifty温泉の記事執筆等、ライターとしても各メディアで活躍中。Webサイト「日本秘境探訪」(http://syakeassi.xsrv.jp/

 

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