《10日目》名寄駅 14:52~稚内駅 19:49

稚内行きの列車は14時52分。荷物をもって駅に戻る。列車が発車するのは陸橋を渡った2・3番ホーム。ここのもかつては屋根があったのだが、維持できなくなってしまったのか、いつの間にか撤去されてしまった。開放的と言えば開放的なプラットホームだ。

乗車するのは、ステンレス製の銀色の車体が輝くキハ54。分割民営で生まれるJRへの置き土産として、国鉄が最後に作ったディーゼルカーのひとつだ。10日間の最終ランナーにふさわしい車両かもしれない。

画面右手に広がるのは、名寄の車両基地跡。巨大な機関庫や研修施設があったのだが、現在は見てのとおり。

名寄を発車した時点で、自分を含め乗客は4名。自分の他は、ほろ酔い気味の男性と、旅行者風の男性、大きなカバンをもった若い女性。みんなどこまで乗って行くのだろうか。

キハ54は使用された路線によって座席が交換されたり配置が換えられたりしたため,車両によって椅子の位置が微妙に異なる。椅子は特急車両からのお下がり。窓と座席の配置が微妙にずれているのも、この形式の特徴だ。

今日の502号車は車両の中心に向かい座席がセットされ、センターの席だけがテーブル付きのボックスシートになっている。ここはちょっとした特等席、車窓は少し見づらいけれど。

「これから自宅に帰るところ」という女性は、途中駅で下車していった。

美深駅で約5分の停車。旭川行きの特急「サロベツ4号」の通過を待って発車。

やがて紋穂内駅に停車。緩急車を利用して作られた駅舎は国鉄分割民営化の頃に各地に出現した物だ。すでに設置から30年近く経過し、駅の廃止や建て替えでかなり減少している。おそらくもう建て替えや塗装をする予定はないのだろう。

でもここまでくるともう芸術的! 時代が付いた外観に、つい惹きつけられてしまう。

天塩川の流れとともに走る空気トレイン。ただいまの乗客は3人……。

乗る人もいない、降りる人もいないまま一駅ずつ停車して行く。「ハツノ」「モンポナイ」「オンネナイ」と独特の美しい名前が旅情を誘う。

咲来(さっくる)駅の語源は「サッ・ル」で,その意味は「夏の道」だという。漢字でもアイヌ語でもロマンチックな駅名だ。

16時05分。音威子府駅到着。この駅は1989年まで、宗谷本線と天北線の分岐・合流駅だった。駅の中には「天北線記念館」が作られ、天北線が現役だった頃の音威子府駅構内が再現されている。

ジオラマの中はかつての賑わいそのまま。跨線橋やホームは現在も同じ位置。貨車や客車が留置されていた敷地や機関庫はすでに原野に戻っていた。


右手前に見えるのが,旧音威子府駅舎。ホームや駅周辺までがリアルに再現され、音威子府愛を感じさせられるジオラマだ。

音威子府駅では約一時間の大停車。もしかするとこの長い停車時間は、運転士が休憩時間を取るためなのかもしれない。乗車している自分にもありがたい気分転換の時間だ。

この時間を活かし、名物の駅そばを訪れてみる。

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