■いよいよ祭典がはじまる
ステージが組まれている広場には、「メナラ・コンドン」という高さ25.5mの塔がそびえています。貯水庫として1885年に建てられるも、二度に渡る洪水のせいで右に傾いてしまったことから、マレーシア版「ピサの斜塔」と呼ばれているのだとか。「普段は、地味な塔なんだけど…」と地元の人が驚くほど、「今日はオレが主役!」とばかりに七色の光を浴びてギラギラと輝いています。
市民のお腹も満たされた頃、ステージでは、いよいよ華やかなショーが始まります。歌に踊りと豪華絢爛なステージに思わずため息。
一番、歓声が沸いたのは、黄色と白の巨大な獅子が小さなポールの上をポンポンと器用に跳ね回る伝統芸能「ライオンダンス」でしょうか。「よく足を踏み外さないなあ」とハラハラしながらも、コミカルな二頭の獅子の動きに見とれてしまいます。
マレーシアの副首相もお祝いの言葉を述べ、大盛り上がりのまま、イベントも終盤にさしかかると、どこからか金ピカの台が3つ、ゴロゴロと押されて運ばれてきました。「セレモニーにはメディアの人もどうぞ」と声をかけてくれたので、インドやロシアから来たメディアチームと台の前に集まると、「ささ、これで、じゃんじゃん、かき混ぜて!」と、長い箸を渡されます。
台の中を覗いてみると、ミカンとソバ。なぜミカンとソバ? と首をひねりながらも、皆で一斉にかき混ぜ始まると、「もっと箸を上げて! 食べ物を高いところから落として!」と指導が入ります。
高ければ高いほど、長生きできるそうですが、ミカンやソバが宙を舞う不思議な光景に、参加者からキャッキャッと笑いが起こります。食べ物で大人がこんなに遊んでいいのでしょうか?副首相など偉い人たちがかき混ぜている中央の台には、お刺身らしき魚の切り身が宙を舞っているので、中身がちょっと豪華なのかもしれません。
「はい、今度は急いで食べて!」と素早くお椀を渡されたものの、ぐちゃぐちゃになった食べ物はとてもおいしそうに見えません。皆で一瞬、顔を見合わせましたが、思い切って口に入れてみると、ミカンとソバの取り合わせが絶妙においしいのです。唐辛子と生姜も効いていて、「うまい、うまい」と、もぐもぐ食べていると、「ささ、もう早く戻って!」と席に帰され、まだソバが残っていた台もゴロゴロと押されて消えていきました。
なんとも慌ただしいセレモニーでしたが、これはマレーシアの華僑ならではの習慣だとか。街のレストランでも体験できるそうです。