《2日目》門司港 12:35 → 門司 12:46 → 下関 12:52
門司港駅から門司駅へは、わずか2駅。そして門司駅で、いよいよ「本州行き」の列車に乗る。慌ただしい乗り換えが続く。
門司駅から下関駅まではたった1駅だ。関門トンネルを越えて九州から本州へ渡る下関行き普通電車は、旧国鉄が開発した交直両用電車415系である。
それにしても、やってくる車両が毎回違うのは実に楽しい。
門司駅を出て数分で関門トンネルに入る。門司~下関間は6.3km。たった1駅の乗車なのに、何度も超えたトンネルなのに、今回は特にワクワクしてしまう。まるで「異次元」へつながるトンネルを越えるようだ。
真っ暗な車窓を眺めながら、これから稚内までの旅路に思いを馳せる。つい、20代の頃の懐かしい鉄道旅を思い出した。
トンネルを出て最初に目にしたのは車両基地。この区間で交流電源から直流電源に代わり、車両基地に並ぶ車両もガラッと一変。青い電気機関車EF66に黄色い近郊型電車115系が見える。いずれも直流型で、九州には存在しない車両だ。そんな車両を見て「本州上陸」を実感する。
《2日目》下関 13:11 → 岩国 16:33
下関駅からは、黄色い電車で東を目指す。ホームで待っていると、引上げ線で待機していたらしい115系3000番台4両編成が入ってきた。
115系3000番台の車内。車両中央のドアは撤去され、中・長距離の乗車にも向くような車内となっている。
最後尾の車両には、掌室の窓越しに後ろの風景をながめる兄妹が。妹はまだ背がちょっとたりないから座席の上に立て膝だ。
JR山陽本線の前身である山陽鉄道は、寝台車や食堂車を最初に導入した鉄道であった。「長距離急行」や「列車ボーイ」「1等寝台車」など、積極的な経営方針で利用者を増やしてきた歴史を持つ。瀬戸内航路の船との競争が、サービスに力を入れた原因である。
下関まで開業したのは1901年のこと。全線の複線化が完成したのは1944年。車窓を眺めていると、複線化の歴史を残すように、二つ並行したトンネルが多いことに気づかされる。
《2日目》岩国 16:34 → 宮島口 16:58
岩国駅で広島行きの快速に乗り換える。今度は昨2016年から本格的に導入が始まった、最新型の227系REDWINGだ。
個人的には「青春18きっぷ」らしい旅といえば、国鉄型のレトロな車両のほうが嬉しいのだが、さすがに最新型だけあり、乗り心地はかなり良かった。
そして広島行きの電車は、今日の目的地・宮島口駅に到着。ここで下車し、日本三景・安芸の宮島を目指して、フェリー乗り場へと向かった。
宮島行きのフェリー乗り場は駅から歩いて5分の距離だ。大きな荷物はいったん駅前の宿に預け、身軽になって乗り場へと向かう。
今でも乗船できる貴重な鉄道連絡船、宮島連絡船。青函や宇高の連絡船は消えたが、ここは今も健在だ。もちろん「青春18きっぷ」で乗船可能。
乗り場へ着くと、夕暮れ近いこともあり、ほとんどが宮島から帰っていきた客であった。おかげでゆったりした船旅(と言っても、10分だが)ができる。今日は夕暮れの大鳥居を楽しめそうだ。
宮島に到着。こちらの乗船口は宮島口へ帰る人でいっぱいであった。島のお土産屋さんも閉店準備に忙しそう。なにか小腹に入れたいと店をのぞいても、見つかるのはもみじまんじゅうのようなスイーツばかり。
宮島口へ戻ったら、名物『あなご飯』を食べようと心に誓って、空きっぱらのまま、日帰りのお客さんが去った後の島を歩く。早朝に熊本を発ち、いま夕暮れ近い宮島にいる。新幹線を使えば、なんと言うことのない距離が妙にいとおしく感じられる。
ほどなく干潮の大鳥居に到着。日本語たけでなく、韓国語、英語、中国語、インドネシア語、台湾語、イタリア語と、いろんな言葉が聞こえてきた。
鳥居の向こうに沈む美しい日没を堪能して、港に戻る。19時を過ぎたら船の便数は激減するので、戻りはJRの連絡船ではなく、その隣を併走する松大汽船のフェリーで帰途につく。昼間は乗客を競い合う二つのフェリーだが、この時間になるとダイヤを調節して、隙間ができないようにしてくれているのがありがたい。
松大フェリーから眺めた海と空。トワイライトに連絡船が浮かぶ。
宮島口に戻ると、あたりはすっかり夜の風情となっていた。手頃な居酒屋も見つからなかったので港近くのお好み焼き店へ。広島風のお好み焼きと、牡蠣焼き、そして本日のシメとなるビール。
あなごめしの夕食はかなわなかったが、広島の味を堪能できた。あなごは翌日に期待しつつ、ほろ酔いで今宵の宿へと向かった。3日目の旅は、明朝、宮島口駅からスタートだ。
文・写真/川井聡
昭和34年、大阪府生まれ。鉄道カメラマン。鉄道はただ「撮る」ものではなく「乗って撮る」ものであると、人との出会いや旅をテーマにした作品を発表している。著書に『汽車旅』シリーズ(昭文社など)ほか多数。
【実録「青春18きっぷ」で行ける日本縦断列車旅】
※ 1日目《枕崎駅~熊本駅》
※ 2日目《熊本駅~宮島口駅》
※ 3日目《宮島口駅~名古屋駅》
※ 4日目《名古屋駅〜戸狩野沢駅》
※ 5日目《戸狩野沢温泉駅~只見駅》
※ 6日目《只見駅~鶴岡駅》
※ 7日目《鶴岡駅~ウェスパ椿山駅》
※8日目《ウェスパ椿山駅~函館駅》
※9日目《函館駅~旭川駅》
