新着記事

【夕刊サライ/テリー伊藤】「いまスーパーカーに乗ったらギャグになる?」(テリー伊藤のクルマコラム 第8回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。水…

神秘的かつ優美な中国磁器の真髄を見る《宋磁 神秘のやきもの》展

取材・文/池田充枝悠久の歴史を有する中国陶磁のなかで、宋時代(960-1279)にはその美し…

医療者も驚いた!新たに登場したある海外医療保険の衝撃【予防医療の最前線】

文/中村康宏日本の社会保障制度が直面する大問題日本では、医療や年金・介護などの財源と…

【夕刊サライ/進藤晶子】原田泳幸さん、尋常ではない超人ぶりと年長者の目線(進藤晶子の暮らし・家計コラム 第8回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。火…

南画の大成者・池大雅、85年ぶりの大回顧展《池大雅 天衣無縫の旅の画家》

取材・文/藤田麻希18世紀の京都で活躍した池大雅(いけのたいが/1723~76)は、…

もしも将棋に新しい駒が追加されることになったら?【イシグロ妄想研究所 vol.1】

妄想・イラスト/石黒謙吾(分類王)古代インドがルーツという説が有力な「将棋」というゲ…

【夕刊サライ/山本昌】継続は力なり! 45歳を過ぎたらオフはなし(山本昌の健康・スポーツコラム 第8回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。月…

団塊世代の足元に広がる深刻な問題に備える本『団塊絶壁』【定年本イッキ読み19】

文/印南敦史昭和22年〜24年に生まれた第一次ベビーブーム世代を「団塊世代」と呼ぶが…

なぜか笑いがこみ上げる!? 日本画の巨匠・横山大観のユーモアを堪能《生誕150年 横山大観展》

取材・文/藤田麻希神々しい金地の屏風に、雲海から頂上をのぞかせる富士山が描かれます。シンプル…

誰かに話したくなる「作家と猫」の知られざるエピソード3つ

取材・文/わたなべあや古来、猫を愛した作家はたくさんいます。たとえば、夏目漱石宅に迷…

サライ最新号

ピックアップ記事

>>過去の記事へ

サライの通販

>>過去の記事へ

趣味・教養

溝口健二『赤線地帯』|名女優演じる娼婦たちの可笑しくも悲しき人間群像【面白すぎる日本映画 第7回】

文・絵/牧野良幸

『赤線地帯』は1956年(昭和31年)公開、溝口健二監督の遺作である。

年齢を重ねた人ならば「赤線」という言葉から映画の内容を想像してしまうことだろう。確かにこれは吉原で働く女たちを描いた映画である。ならばエロティックな描写があるのではないかとドキドキしても仕方あるまい。

映画が始まるや、まるで『ウルトラQ』のような不気味な音楽が流れてくる。ピンク色の妄想をいだいていたこちらは、いきなり面食らうものの、これが男と女の愛欲や騙し合いを暗示しているのかと気をとりなおす。タイトルバックに映される浅草の風景も深い樹海のようである。この街でどんな出来事がおこるのだろう……。

と思わせて実は『赤線地帯』には濡れ場もなければ、不思議な現象も起きない(やっぱり『ウルトラQ』じゃなかった)。この映画は吉原で働く娼婦たちを描いた、ズバリ群像劇なのである。

一人息子のために働くゆめ子(三益愛子)、病弱の亭主と乳のみ子のために働くハナエ(木暮実千代)、父親の借金が原因でお金に執着するようになったやすみ(若尾文子)、田舎に嫁入りしたものの破綻するより江(町田博子)。

そこに金持ちの父親に反発して身を崩した関西娘ミッキー(京マチ子)が新人としてやってくる。

以上が「夢の里」で働く女たちである。彼女たちはそれぞれ悲しい現状を背負っているが、溝口健二はどこまでもカラッと描いている。

なんといってもゆめ子の“グダグダ感”が強烈だ。「お遊びして、ね、お遊びして」と客の袖をつかむ姿は“日本の母”三益愛子とは思えない。180度違う女になりきっている。

『祇園囃子』で艶やかな芸妓を演じた木暮実千代が、まさかの草履ばきで赤ん坊にミルクをやる姿も必見。たとえ亭主が自殺を計ろうとしても、ハナエは最後まで生き抜く気迫を見せる。

やすみが男客から金を巻き上げる手口はまさに“悩殺”だ。同じ男として「これには気をつけないと」と思うが、現実に若尾文子のような女に言い寄られたら誰だって逆らえないだろう。

そしてミッキー。自分の身体を「ヴィーナスや!」「八頭身や!」と讃える転身爛漫さ。京マチ子以外、誰がこの役をできようか。

このように映画は娼婦たちの辛い境遇を描きながらも、どこかコメディのようである。しかし喜劇のオブラートに包んでいるからこそ、行間に悲しみを感じ、彼女たちのそばに寄り添うことができるのだと思う。

というわけで『赤線地帯』は何度でも観たくなる映画である。僕が「夢の里」を訪れるのはこれで何回目になるだろうか。

【今日の面白すぎる日本映画】
『赤線地帯』
■製作年:1956年
■製作・配給:大映
■モノクロ/85分
■キャスト/京マチ子、若尾文子、木暮実千代、三益愛子、沢村貞子
■スタッフ/監督:溝口健二 脚本:成澤昌茂、音楽:黛敏郎

DVD セル『赤線地帯』発売・販売元/角川書店 品番/DABA-90904 価格/2,800円+税

文・絵/牧野良幸
1958年 愛知県岡崎市生まれ。イラストレーター、版画家。音楽や映画のイラストエッセイも手がける。著書に『僕の音盤青春記』『オーディオ小僧のいい音おかわり』(音楽出版社)などがある。ホームページ http://mackie.jp

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

関連記事

  1. ひとり狼|組に属さず裏街道を生きる一匹狼を描く「股旅もの」の傑作…
  2. 市川崑監督『犬神家の一族』|黒々しさが味わい深い傑作ミステリー映…
  3. 市川崑監督『鍵』|入り口はエロス、出口はブラック【面白すぎる日本…
  4. 警視庁物語 深夜便130列車|刑事ものドラマの先駆け【サライ名画…
  5. 『ゴジラ』一番面白いのはやはりこの第1作!【面白すぎる日本映画 …
PAGE TOP