信州の名湯・長野県山ノ内町の渋温泉は約1300年前、行基による発見とされ、戦国時代には武田信玄の隠し湯のひとつとされました。
温泉街には9つの外湯があり、これを巡り歩くのが渋温泉の楽しみです。雪の残る石畳の道を下駄の音を響かせて歩く風情は、古き良き日本の温泉を感じさせます。
9つの外湯は、もともと村の共同浴場として代々守られてきた経緯があります。ですから今も住民の方の生活のお風呂となっています。誰もが気持ちよく利用できるように、清潔に掃除が行き届き、旅人を迎え入れてくれます。どの浴場にも共通の鍵がかけられ、渋温泉の宿泊者には無料で外湯の鍵が貸し出されます。
源泉掛け流しの熱いお湯で、泉質名はナトリウム・カルシウム‐塩化物・硫酸塩温泉なのですが、九湯は微妙に泉質が異なり、湯の色も違います。薄茶色や薄緑色ににごった湯もあれば、透明な湯に白い湯の花が浮かぶ湯もあります。
お湯の力も強力ですが、温泉街の魅力も抜群で、土産物店やラーメン屋さん、老舗のお饅頭屋さん、射的や卓球場などが並び、どこでもやさしい笑顔の地元の方に出会えます。九湯めぐりの手ぬぐいにスタンプを押しながら、ぜひ湯めぐりと街めぐりを楽しんでください。
【渋温泉の公式サイト】
http://www.shibuonsen.net/
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。