山芋のとろろ汁|年末年始の疲れた体を労ってくれる優しい味

とろろ汁に青海苔をふると、風味が豊かになる。

とろろ汁に青海苔をふると、風味が豊かになる。

今年も残すところあと僅(わず)か。忘年会で美酒美食の席が続き、休肝日を作るのが難しいという人も多いのではないだろうか。

そのような季節に積極的に摂りたい食材は、今が旬の山芋(やまのいも)。中国では漢方薬として処方されるほど、古来より薬効があると考えられている野菜だ。

主な成分はでんぷんだが、豊富に含まれるジアスターゼが消化を助けてくれる。また、特有の粘りのもとであるムチンは、特にたんぱく質の消化吸収を助ける成分だ。

そのような特性を考えれば、牛タンや麦飯に、山芋を摺(す)りおろした「とろろ汁」が添えられるのも納得がいく。肉や麦飯の消化を促す役割を担っているのだろう。

ときに、「三日とろろ」という言葉をご存じだろうか。

全国各地に、松の内の一月三日にとろろを食す地域があるという。長寿や健康を祈願してとろろを食べるというが、正月の風習としてはあまり知られていない。しかし、お節料理や餅などを食べ過ぎてしまったときに、軽やかにお腹におさまるとろろ汁は、胃腸にやさしそうだ。

さて、山芋とひとくちにいっても、種類は様々。水分が豊富な「長芋」、粘りも旨みも濃厚な「自然薯(じねんじょ)」、げんこつのような形状の「つくね芋」、銀杏(いちょう)の葉に似た形をした「いちょう芋」など。食べ比べてみると、それぞれに個性があり、なかなか興味深い。

年末年始はぜひ、暴飲暴食には気を付けつつ、とろろ汁で体を労(いたわ)ってはどうだろう。

写真・文/大沼聡子
※本記事は「まいにちサライ『食いしん坊の味手帖』」2013年12月30日掲載分を転載したものです。