湯気立ち昇る路地をそぞろ歩いて飲み歩く

湯が好きで酒にも目がなくて……とくれば、湯上がりに町のあちらこちらを散策しながら飲み歩き。気取らず一杯いただき、もう一軒。ほろ酔い気分でちょっと散策。

海上花火大会の会場でもある熱海サンビーチ。開発で失われた砂浜を復活させ、デッキやテラスなどを整備。南国情緒溢れる。

東京駅から東海道新幹線で最短36分で到着する静岡県熱海。気軽に出かけられる温泉地として大きな魅力がある。熱海温泉は徳川家康に気に入られたことで広く知られるようになった。その後、温泉を江戸城へ運ぶ「御汲湯」が歴代将軍に継承され、90℃以上の熱い湯が江戸に着く頃には、ちょうど良い湯加減になったという。

まずは熱海駅から15分ほど歩き、熱海サンビーチを目指す。400mほどの海岸沿いにはヤシの木が続き、目の前には初島が見える。尾崎紅葉の『金色夜叉』の別れの場面に登場するお宮の松、貫一・お宮の像も健在だ。熱海は昭和30年代に新婚旅行や団体旅行先として発展。往時の賑わいの名残を留めるのが熱海サンビーチから徒歩約5分にある『ゆしま遊技場』である。

懐かしい昭和の雰囲気を楽しむ

13:00 ゆしま遊技場

射的は8弾500円で、景品を倒すのではなく点数別の人形を倒すポイント制で、景品がもらえる。スマートボールは18球500円。射的の的の陶器の人形も修理しながら使っている。

ゆしま遊技場
静岡県熱海市銀座町5-9
電話:0557・81・2807 
営業時間:13時~19時、土曜・連休~22時、日曜・祝日~21時
定休日:木曜ほか

開業は昭和28年(1953)、射的やスマートボールがある昔ながらの施設で、内装も開業当時のまま。かつてはこのような店が40軒ほどあったという。昭和レトロブームで立ち寄る若者に交じり、温泉街らしい遊技に興じたい。

アーケードのある熱海銀座を15分ほど北上すると、江戸時代に熱海七湯と呼ばれた源泉のひとつ大湯の間欠泉がある。その近くには日帰り入浴施設『日航亭大湯』が立つ。敷地内から湧く90℃ほどの源泉を、量を調節して少し熱めの43℃前後にして、内湯と露天風呂に引湯。塩分濃度が高く、よく温まる滑らかなかけ流しの温泉の良さを実感したい。

熱めの湯でリフレッシュ

15:00 日航亭大湯

広々とした露天風呂。もともと旅館だったが20年ほど前から日帰り入浴施設に。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、弱アルカリ性。メタケイ酸が豊富でとろみのある湯。

日航亭大湯
静岡県熱海市上宿町5-26
電話:0557・83・6021
営業時間:9時~18時(最終受付17時)
定休日:火曜、第3水曜
料金:1100円

かつて熱海の中心部として多くの観光客を迎えた熱海銀座通りは、昭和の佇まいを感じる。近年は海鮮丼の店やプリンなどのスイーツ店が出店。

干物と日本酒を堪能

早春に咲く熱海桜の桜並木がある糸川遊歩道を15分ほど歩き『干物ダイニング yoshi‒ 魚(うお)‒tei』で腹ごしらえとしよう。天日干しの製法を守る『干物屋ふじま』が営み、魚に合う豊富な日本酒が楽しめる。同店の干物は、漬ける塩水に純米酒を使ってアミノ酸などを引き出し、干す前にはいしり(魚醤)に味醂をきかせた特製だれを塗っている。珍しいビンチョウマグロや鰻の干物のほか、朝獲れの地魚の刺身なども味わえる。

旨し干物を肴に一献

17:00 干物ダイニングyoshi-魚(うお)-tei

手前は脂ののりがいいビンチョウマグロ大トロの干物1760円、奥は鰺フライ1540円。鰺の干物を使ったフライで、身の締まりと旨味が凝縮している。酒は60cc660円~。静岡の銘酒「英君」「葵天下 」ほか31蔵40種類ほどの日本酒を用意。
親しみやすい外観。

干物ダイニングyoshi-魚-tei
静岡県熱海市渚町13-11
電話:0557・85・2007
営業時間:11時30分~15時、17時~19時30分(最終注文)
定休日:月曜、第3日曜 31席。

腹ごなしもかねて5分ほど歩き、バー『ネグローニ』へ。オペラの楽曲が流れる空間で、店主の吉田務さん(46歳)が客の好みに応じてカクテルを用意する。夜が深まる中、ほろ酔いで駅に向かう。22時に店を出ても東京方面の新幹線に充分間に合う。熱海の立地の良さに改めて驚く瞬間である。

しっとりと酒に酔う住宅街のバー

19:00 ネグローニ

左はアイリッシュウイスキーとコロンビア産コーヒー、生クリームのカクテル1650円。右は店名に因むカクテル・ネグローニ。ジンとアールグレー茶葉を漬け込んだカンパリ、スイートベルモットなどを使用。1540円。
商店街の端にあり、一見客でも入りやすい窓のあるバー。

ネグローニ
静岡県熱海市中央町16-8 石黒ハイツ1階
電話:0557・81・1778
営業時間:18時~翌1時(最終入店24時)
定休日:日曜、連休の場合は最終日 14席。

取材・文/関屋淳子 撮影/藤田修平

※この記事は『サライ』本誌2023年12月号より転載しました。

『サライ』12月号特別付録は『2024年日本美術“吉祥”「辰年」カレンダー』

 

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