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今回の「半島をゆく」の舞台は薩摩半島。鹿児島空港へ降り立った一行は、空港から指宿までは約1時間30分。福岡を拠点に九州各地で活躍される池田清太郎カメラマンの車に乗って、途中「道の駅」などで休憩しながら指宿市を目指した。

指宿市へ到着するなり一行が向かったのは枚聞神社。薩摩一宮という由緒ある神社で、開聞岳を御神体とする。通常晴天であれば、くっきりとした開聞岳を臨めるのだが、あいにくガスに覆われていて撮影がなかなかうまくいかなかった。

案内役は「かいもん伝え歩きの会」の上野景俊代表。境内を歩きながら、安部、藤田両氏に熱心に説明してくださった。境内にある資料館には、かつて琉球国王から献じられた扁額が多数掲示されている。歴史上複雑に絡みあう薩摩と琉球の関係の一断面を知ることができた。上野代表とのやり取りは予定時間を過ぎても続いた。どうやら予定していた時間が短すぎたようだ。熱心に取材していただくのは嬉しい限り。次の予定地で待っていてくださっている方々へ遅れる旨の連絡。本来、時間に余裕があったら開聞岳にも登ってみたかったが、残念ながら断念した。

予定時刻を大幅にオーバーして一行が向かったのは、鰻池。5500年前の火山の爆発によって形成された湖だ。こちらは3名の女性観光ボランティアの方々が案内してくださった。10月号の『サライ』本誌でも安部氏が言及しているが、路上に車を止めたとたん、「そこに止めるとタイヤがダメになりますよ」という声が飛んだ。驚きながらアスファルトの面を触ると、確かに熱い。今まで、どれだけのタイヤをダメにしたのだろうか。

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鰻池の前に立つ安部龍太郎氏。

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地面から噴出する蒸気。近づくのは厳禁だ。

この地を取材先に選んだのは、西郷隆盛が征韓論を巡る政府内の争いを経て、鹿児島に帰郷していた時に、湯治で1か月ほど滞在していたというからだ。温泉地特有の硫黄臭がする中、3名の女性に案内されて西郷隆盛の寓居跡に向かう。西郷がこの地を訪れたのは、明治7年。猟犬13頭が一緒だったという。

西郷寓居跡には、当時の建物は何も遺されていないが、西郷隆盛像があった。西郷像といえば、東京・上野の像がもっとも有名で、ほかにも鹿児島市や西郷が流罪に処せられた沖永良部島などにもある。いずれも恰幅の良い威風堂々たる西郷像だ。だが、鰻池の寓居跡にある西郷像は、それらとは明らかに一線を画すたいへんキュートな西郷像だった。この西郷像は、地元鹿児島産の山川石が使われている。藩政時代には、藩主島津家の墓石などにも使われていたという石だ。眼球に使われているのはガラス玉。このガラス玉がいっそうキュートに感じさせてしまうのだろう。

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こちらが日本一キュートな西郷隆盛像。鰻池滞在の2年後に西南戦争が勃発する。

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案内をしてくださった指宿市の観光ボランティアの方々。ありがとうございました。

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スメ(本誌参照)で野菜を蒸してのおもてなし。そのままで美味しく頂けました。

前述の通り、西郷はこの地を訪ねた際に13頭の猟犬を同行していた。上野の西郷像が犬と一緒なのはよく知られているが、「西郷と犬」の故地である鰻池の西郷像も一頭のかわいい犬を連れているのだ。

取材第一日目の宿泊先は「指宿 白水館」。取材中、「今日はどちらに宿泊ですか?」と聞かれ、「白水館です」というと、「(白水館は)指宿の迎賓館のようなところです」と答えが返ってくる市民に愛される宿だ。

一行は温泉や砂風呂に癒され、地元鹿児島産の新鮮な食材をふんだんに使った料理に舌鼓をうった。夕食の席には、元鹿児島大学教授で現在、志學館大学教授と鹿児島県立図書館長を務める原口泉先生がかけつけてくださった。たちまち安部、藤田両氏と原口先生との間で歴史談義が活発に交わされた。むろん、杯は進む。

「先生方、明日の朝も早いですからほどほどに・・・・・」。

薩摩半島取材、初日の夜は濃厚な一夜となった。

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市民に愛される「指宿の迎賓館」、「指宿 白水館」。

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「指宿 白水館」の大浴場。館内で「砂風呂」も楽しめる。

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「指宿 白水館」で活発な歴史談義。左から原口泉氏、安部龍太郎氏、藤田達生氏。

文/藤田達生
昭和33年、愛媛県生まれ。三重大学教授。織豊期を中心に戦国時代から近世までを専門とする歴史学者。愛媛出版文化賞受賞。『天下統一』など著書多数。

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